俺は今日も給食を屋上に持って行って、一人で食べる。
今日はまだ竹が来ていない。どーせ腹でも壊してんだな、ラッキー。
と思ったのもつかの間。
「亮芽くん!廊下に上履き袋落ちてたよ!」
うーわ、来んのかよ。
「あ、あざっす」
ロッカーを色々整理してたら出てきたのが、そのまま廊下に落ちたんだな。
俺はそれを受け取ったのだが、ふと何かが喉につかえた。
「…なんで、これが俺のってわかったんすか?俺全部の持ち物に名前書いてねーんだけど」
俺は、自分の持ち物に名前を書いたことがない。
そのため大抵、落し物は帰ってくることなくさよならなのだが、どうしてこいつはわかったのだろうか。
すると、竹は気持ち悪い笑顔で、
「え~?三年間そばにいるからわかるんだよねぇ。一番の決め手は、袋から亮芽くんが春に着てたシャツと同じ香りがしたことかな」
と、自信ありげに言った。
「亮芽くんって、三学期の終業式には必ず上履き持って帰るじゃん。で、そこで上履き袋も洗うでしょ?」
そこまで俺も知らないわ。
「そのときに、お母さんがあの春限定の桜の香りの柔軟剤を使うんだろうね。春休み明けの亮芽くんからはいつも桜の香りがするし、上履き袋にその香りがしてもおかしくはないなと」
…こいつ、まじであと一歩間違えたら警察行きじゃねーの?
いや、もう行っていいんじゃね?
「あんた怖ぇんだよ。なんか若いのにオジサンっぽくてキモいし」
「噓っ、僕キモい!?そんなつもりはなかったけどな…」
あ、キモい自覚がない方でしたか。どうぞ警察署へ案内しますから、こちらへ。
早く終わってくれ、俺の中学校生活。
俺は給食のサバの味噌煮とご飯を口へ放り込み、もう竹のことは諦めようと思った。
「…春といえば、卒業だね。亮芽くん、本当に高校行かないの?」
…俺が嫌いな、進路の話。
「行かねー。卒業して、すぐ親戚の会社に勤めるって決めてんの。もう何度も言ってんだろ、じーさんかよ」
俺は「不良」らしいけれど、本当にバカ。
頭はよくないどころか、勉強する気もない。運動も特に興味がない。
自分でも薄々わかっている、このダメ人間さが、進路の話になると俺から「俺」を奪う。
「僕ね、本当にダメ人間だったんだ」
一瞬、俺の考えていたことを見透かされたと思った。
「アイドルの追っかけしててさ。でも、その推してた子が引退しちゃって、一気にやることなくなって」
「どれくらい推してたの、そいつのこと」
「一応その子が使ってた柔軟剤の種類と、その彼氏の体重くらいまでは突き止めた」
まさかそのアイドル、竹のせいで引退したんじゃ…。
やっぱり立派なプロのストーカーだろ、こいつ。
「あ、もちろんその彼氏と一緒の体重にしたよ?」
う、追い打ち。
今日はまだ竹が来ていない。どーせ腹でも壊してんだな、ラッキー。
と思ったのもつかの間。
「亮芽くん!廊下に上履き袋落ちてたよ!」
うーわ、来んのかよ。
「あ、あざっす」
ロッカーを色々整理してたら出てきたのが、そのまま廊下に落ちたんだな。
俺はそれを受け取ったのだが、ふと何かが喉につかえた。
「…なんで、これが俺のってわかったんすか?俺全部の持ち物に名前書いてねーんだけど」
俺は、自分の持ち物に名前を書いたことがない。
そのため大抵、落し物は帰ってくることなくさよならなのだが、どうしてこいつはわかったのだろうか。
すると、竹は気持ち悪い笑顔で、
「え~?三年間そばにいるからわかるんだよねぇ。一番の決め手は、袋から亮芽くんが春に着てたシャツと同じ香りがしたことかな」
と、自信ありげに言った。
「亮芽くんって、三学期の終業式には必ず上履き持って帰るじゃん。で、そこで上履き袋も洗うでしょ?」
そこまで俺も知らないわ。
「そのときに、お母さんがあの春限定の桜の香りの柔軟剤を使うんだろうね。春休み明けの亮芽くんからはいつも桜の香りがするし、上履き袋にその香りがしてもおかしくはないなと」
…こいつ、まじであと一歩間違えたら警察行きじゃねーの?
いや、もう行っていいんじゃね?
「あんた怖ぇんだよ。なんか若いのにオジサンっぽくてキモいし」
「噓っ、僕キモい!?そんなつもりはなかったけどな…」
あ、キモい自覚がない方でしたか。どうぞ警察署へ案内しますから、こちらへ。
早く終わってくれ、俺の中学校生活。
俺は給食のサバの味噌煮とご飯を口へ放り込み、もう竹のことは諦めようと思った。
「…春といえば、卒業だね。亮芽くん、本当に高校行かないの?」
…俺が嫌いな、進路の話。
「行かねー。卒業して、すぐ親戚の会社に勤めるって決めてんの。もう何度も言ってんだろ、じーさんかよ」
俺は「不良」らしいけれど、本当にバカ。
頭はよくないどころか、勉強する気もない。運動も特に興味がない。
自分でも薄々わかっている、このダメ人間さが、進路の話になると俺から「俺」を奪う。
「僕ね、本当にダメ人間だったんだ」
一瞬、俺の考えていたことを見透かされたと思った。
「アイドルの追っかけしててさ。でも、その推してた子が引退しちゃって、一気にやることなくなって」
「どれくらい推してたの、そいつのこと」
「一応その子が使ってた柔軟剤の種類と、その彼氏の体重くらいまでは突き止めた」
まさかそのアイドル、竹のせいで引退したんじゃ…。
やっぱり立派なプロのストーカーだろ、こいつ。
「あ、もちろんその彼氏と一緒の体重にしたよ?」
う、追い打ち。



