一卵性双生児粛清法(いちらんせいそうせいじしゅくせいほう)

その物騒な名の通り、一卵性双生児を排除——つまり、殺すことを認める法律である。
もちろん犬や猫、家畜のことを言っているではなく、人間の一卵性双生児を指す。
当然そのような非人道的な法案は議会に提出された瞬間から非難の的となり、可決されるようなことはないだろうと誰もが思っていた。

平時ならば(・・・・・)

実際、二十年ほど前に一度法案として提出された際は議会の九割以上の反対にあい却下されている。

しかし今、この国はある危機に瀕している。

ほんの数十年前まで少子化が問題だと騒がれていたこの国は、奇跡的な人口増加を遂げた。
その増加率は爆発的で、島国の狭い土地、限られた仕事、そして食糧の奪い合いにまで発展しかねない状況に陥っている。
そんな中で再び提案されたのがこの法律だ。
以前は非人道的に思えたその法案も餓死者や自殺者を目の前にし、明日は我が身という立場になれば、希望の光のように思えてしまう人間だっている。

法案の内容を要約すればこうだ。
・その目的は、国の人口を一定数減らすこと。
・人口減少に至ったのち、狭い国で遺伝子の多様性を維持するため、同じDNAを持つ一卵性双生児を粛清の対象とする。
・粛清されるのは双生児のうち、どちらか一方。
・成人を対象とする。

その方法は——。