誰もいなくなった長い廊下。
人目につきづらい廊下の1番奥の部屋。
大きな人影がユラっと揺れた。
弦里はゆっくりその扉のドアノブを回す。
ギィィ とドアノブからは不気味な音が漏れる。
この部屋だけ時間の流れが違うかのように、淡いベージュの細いストライプの壁紙。
何も変わらない白を基調とした家具達が出迎えてくれる。
机にソファーにベット。
ベットの上には沢山のぬいぐるみ、机の上には幼いあの頃の自分の姿があった。
写真立てを取り、じっと眺める。
『弦里!』
あの声が蘇る。
『弦里と私は大きくなったら結婚するのよ!』
君と六花じゃ結婚出来ないことは君が1番分かっていた。
『ずっと一緒にいましょうね』
屈託のない無邪気な笑顔。
『弦里ー!』
いつも君は僕の名前を呼ぶんだ。
いつも、いつも…。
僕のことを見つけるのはいつだって君だった。
『弦里』
最後の言葉は
『御影をお願いね』
その言葉が耳から離れないんだ。
「…千影」


