「…っ」
「刻大丈夫?」
頭を抱える刻に夜々は声をかける。
「…っぐ」
「何処か怪我してる、の…?刻…」
刻に手を伸ばす夜々。
パシッと刻により跳ね返される手。
「…ひとりにしてくれ」
そう言って刻は自身の部屋と向かっていった。
ひとり取り残された部屋で夜々はただじっと壁を眺める。
「あれ、帰ってきてたんだ 刻は?」
「…部屋にいる」
「ふーん、珀も?」
「…………っ」
その言葉を聞いて夜々はその男に掴みかかる。
「珀は死んだ!何もかもあなたのせい!」
夜々が急に掴みかかって来たことに少し驚きつつその男はニヤッと笑う。
「くくっ、何言ってるんだよ、全部刻が望んだことだよ 僕は何もしてないよ」
「……っ!」
「怖いなあ〜夜々ちゃん」
ニタニタと笑う男に夜々の掴む手の力は緩んだ。
「少し頭冷やしたらどう?僕は退散するよ」
部屋を出ていく男。
夜々はその後ろ姿を睨みつけるしか出来なかった。
コツコツと靴の音が廊下に響く。
鼻息混じりの鼻歌が靴の音と相まってメロディーを奏でる。廊下の先の扉を男は開いた。
「りーりちゃん!」
部屋には柔らかな長い髪を纏い悲しそうな顔をしている凜々の姿。
「あれ〜?どうしたの?なんか悲しそうだね〜」
男はヘラヘラと笑いながら凜々の様子を楽しんでいる。
「もしかして、刻の能力使って会いに行った?」
テーブルの上に乱雑に置かれた錠剤の粒達。
その錠剤を見てその男は悟る。
ソファーに座り項垂れる凜々に男はそっと凜々を抱きしめた。
「大丈夫、必ず取り戻すよ 僕達の姫を」
凜々はその男の腕をぎゅっと握る。
「翼ちゃんは本当に無理やり連れ去られたの?」
凜々の揺れる瞳にその男はそっと呟いた。
「そうだよ、悪い悪い王子様にね」


