もう既に外は暗く、静かな夜が【リデルガ】を覆っていた。
【学園】の六花専用室の窓からは光が煌々と漏れていた。
翼は何が何だか追いつけないまま専用室に真理愛とふたりで過ごしていた。
【占いの館】戻った御影はすぐに姿を消し、そして愁と壱夜で舞踏会に潜入する事が決まっていた。
琉伽は陸玖ちゃんに付きっきりで、庵と弦里は隣の部屋で何か話している。
私は翼ちゃんと部屋の窓から降る雨を眺めていた。
「…よく、降るね」
「…うん」
ただならぬ事態に私も翼ちゃんも気分が落ちる。
海偉くんが攫われたなんてそんな事が起こるなんて…。
真理愛は何だか、落ち着かない…、胸騒ぎが収まらない…。
-怖い…。
愁と陸玖は2階の一室に入ると、壁から絨毯まで真っ赤の部屋が2人の視界を覆う。
そこには数人の貴族たちの他に部屋の隅に小柄な黒いワンピースと仮面に身を包んだまだ幼い少女が立っている。
「…皆様、お待たせ致しました」
その少女が淡々と落ち着いた声色で言葉を発する。
「それでは…鬼ごっこのスタートです」
その言葉と共に愁と陸玖は気づいたら全く知らない場所へと飛ばされていた。
「「え…?」」
陸玖は周囲を見渡す。
そこにはただ広い空間が広がっており、巨大な熊のぬいぐるみや、つみきという子どものおもちゃが規格外の大きさで転がっている。
さっきまでいた洋館とは全く違う。
「ここ…どこ…」
そして陸玖は気づくここには自分ただ1人しか居ないことを…。
「愁…どこ行った?」
一瞬にしてさっきまでいた場所と違う所に飛ばされた陸玖の頭は困惑していた。
ここで一体何が起きるのか…陸玖の身体は強ばり脈が早くなる。そんな身体を落ち着かせようとふーっと深く深呼吸をする。
-冷静になれ…冷静に…。
するとカサっと背後から人の気配を感じ、咄嗟に太ももの銃を手に取りその方向へ向ける。
誰もいない。気配のする方へジリジリと慎重に向かう。そして一気に、距離を詰め物陰に銃を向け照準を合わせた…がそこにいたのは子どもだった。
「…ぇ…」
三人で身を寄せ合い固まる幼い子ども達。
少し大きな身体の男の子が幼い二人の子どもを覆い被さる様に抱きしめている。
陸玖はその三人の子どもの気配に銃を降ろした。
-なんで…なんで、
吸血種と人間種の気配は全く違う。
-どうしてここにいるの…?
自分の五感が人より鋭い事は幼い時から身をもって自覚している。
普通は聞こえない小さな音や、人の気配、匂い…何もかも人とは感じ方が違った。
それでも陸玖は今は自分自身が信じられない。
だってこの子達はここに居るはずのない子どもなのだから…。
「…なんで人間の子どもが…?」
ここに居るはずがない…。
いてはいけない、のに…。
その瞬間
『おい!聞こえるか陸玖!』
脳内に愁の声が響く。
その慣れない感覚に咄嗟に頭を抱えた。
「…っ」
『おい!陸玖!
「聞こえてるっつーの!急に思考繋がないでくれる!?」
『ぁ、悪ぃ、急に居なくなるからびびったわ』
陸玖は愁の能力を思い出す。
ー確か…
愁は人と人との思考や視界を繋ぐことが出来る能力を持っている。
離れた場所にいても愁が意志を持って触れた人物とは思考が繋がり頭の中で直接会話が出来たり、愁が見せたい視界を共有することが出来る。
ーさっき肩を触られた時…
その時から愁は何かあってはぐれたらこうするように考えていたんだろう。
「急にいなくなったのはあんたでしょう…」
陸玖は愁の急な登場に少し落ち着きを取り戻す。
『陸玖…』
愁の動揺の声が頭に響く。
その声に目線を子どもたちに向ける。
ーきっと、愁の目の前にも…
『…人間か…?』
そうこれはきっと吸血種と人間種の゛鬼゛ごっこ。


