その少年はただただ怯えていた。
冷たくて寒い牢屋の中、数十人の子ども達が身を寄せ合い虚ろな目で虚空を見つめていた。
俺の縛られた縄を解いてくれた少年は俺の目をジッと見つめる。

「お前たちも人間種だよな、何処から来た?こんな傷だらけで何があった?」
「…何処…から?」

俺の言葉に少年は困惑する。

「…何処から…何処から、来たんだろう」
「…ぇ。【リアゾン】から攫われたんじゃねーの?」
「…【リアゾン】?【リアゾン】って何?」
「…何って、お前」

その少年の言葉の意味が分からなかった。
少年は【リアゾン】という言葉を初めて聞いたように首を傾げる。

「知らないのか?」
「…うん。僕たち生まれてからずっとここにいるから…。知らない」
「…生まれた時から?」
「人間種は僕たちだけなんだって。あいつらは言うの。でも、お兄さん人間種なんだね。僕たち以外にも居たんだね」

少年は少し嬉しそうに笑い海偉の服の裾をぎゅっと掴む。その仕草に海偉は何も言葉が出ずただ少年を抱きしめるしか出来なかった。

「……っ」


他の子ども達も少年同様傷だらけ。
何かに怯えるようにただ膝を抱える。
何が起きている?この子ども達は一体何をさせられてる?
海偉は自分の心臓の音が速くなっていくのを感じた。
その瞬間大きな音が空間を支配する。

ブーッブーッブーッ

その音共に子ども達は悲鳴をあげる。

「やだぁぁあ!!嫌だぁぁあ!!」
「ぁぁあああああ」
「助けて…やだよぅ…」

泣き始める子ども達。
海偉は何が何か分からず困惑する。

「…始まった」

少年はぽつりと呟く。

「お兄さんもするの?鬼ごっこ」
「…鬼ごっこ…?」

瞳に光のない少年はそう呟いた。