気づいたら僕はここにいた。
毎日毎日家族が減っていく。
弟も妹もいつもどんどん…どんどん…いなくなる。
どうしてかな。なんでかな。
僕たちは一体何をしたのかな。
これは僕たちの罰なのかな。
逃げて逃げて…逃げて、逃げて…
僕たちはいつまで逃げ続ければいいんだろう。
今日もまたあの時間が始まる。
僕たちはジッとその時間まで冷たくて寒い牢屋の壁に身を寄せ合いながら何も発さずジッとする。
それが僕たちの日常だった。だけどその日は違うことがひとつあったんだ。
椅子に縛り付けられているお兄さんの姿。
そのお兄さんは僕たちの姿を見るなり瞳を大きく見開いてびっくりしたように僕たちを凝視する。
誰だろう…。
「…んっ、げっほ。お、お前…」
そのお兄さんは僕と目が合うとむせながら言葉を発する。
僕はなんとなくそのお兄さんに興味が沸いて近くまで寄って行った。
「お前たち…」
「お兄さん…誰?吸血種?」
あいつらとは違う雰囲気に気づいたら声をかけていた。
「いや、俺は違う。人間種だ」
「…に、人間種?」
僕たちのほかに人間がいたの?この世界に…?
本当に…?僕は信じられなくて呼吸が苦しくなってくる。
「はぁ…はぁ、」
「おい、大丈夫か?おい!」
お兄さんは呼吸が乱れている僕のことを心配して動こうとするけど手を縛られいるせいで動けない。
「苦しいとこ悪い、腕のこれ。外せるか?」
僕はそのお兄さんの言葉を聞いて震える手で固く結んでいるロープを必死で解いた。
「おっ、ありがとうな」
お兄さんは僕の頭を撫でる。
その瞬間撫でられて頭が暖かくなった気がして何故か涙が出そうになった。
「お前…」
まだ息が苦しくて胸を抑える。
人間…僕たちと同じ人間。僕たち以外の人間に初めて出会った。


