ピチョン…ピチョン…
ひんやり冷たい空気が頬を刺す。
何処からか水の音が聞こえる。
ズキズキと痛みが頭を刺す中、うっすらと意識を取り戻し、目を開けた。
薄暗い煉瓦造りの壁…
-ここ何処だ…
海偉はぼーっとする頭をなんとか動かそうと思考を凝らす。
「なあ~こいついつまで寝てんの?」
そんな聞きなれない声が耳をつく。
その声の方に視線を向けると
「ぁ、」
さっきの声よりも高い声が微かに聞こえた。
ぼんやりする視界、定まらない焦点でボヤっと動く何かに焦点を合わせる。
「おっ、起きたか?」
低い声、その声の主の顔を確かめたいのにまだ視界がぼやける。ぼやける視界の中声の主と思われる男は海偉に近づく。
「お前どんだけ気失ってるわけ」
男は海偉の前髪をガっと掴み視線を上へ向ける。
「っっ!」
「はは、へえ~お前がハンターの一族ね~」
その男はニタニタと海偉の顔を見て笑う。
「まぁーじ、ビビったわ〜、あいつ。抜け出したかと思ったら人間見つけてさ、しかもハンターかよ。なんだこれ、笑うわ」
「……っ」
海偉は男の言う意味が分からず混乱する。
腕を動かそうとするが、椅子の背もたれの後ろで縛られており動かせない。
-何があったけ…思い出せ…
海偉は何があったか思い出そうと必死に動かない頭で記憶を遡る。
-そうだ…【リデルガ】に行こうと【学園】の森を歩いて…何かの気配がして立ち止まり…あ…
海偉は思い出した。
森を歩いていると何か物凄い殺気を感じその場に立ち止まった。
周りを警戒したが、誰も周りにはいない。
不審に思っていると、衝撃と共に何者かに突撃され意識を失った。
「……っ」
声を出そうとするが、海偉は声が出ない。
「夜々(やや)、俺あいつのとこ行くからこいつの見張り頼むわ」
「…分かった」
その男は海偉の目の前から姿を消した。
-…消えた?
目を丸くする海偉。
「…頭、怪我してるよね…」
目の前で消えた男に意識を持って行かれる中、その男と交代するように海偉の目の前に現れた女。まだ幼い。
「…喋れる?」
「…ん、げっほ、こほっ」
海偉は喋れろうとするが噎せる。
「…頭 ちょっと見せて」
縛られている中女は海偉の頭の怪我をみて手当をする。
-何なんだ、ここ…こいつらは…
「…ん、血止まってるし大丈夫」
「………」
その女はじーっと海偉の顔を見る。
「…珀(はく)は人間見ると見境なく襲っちゃうの…」
-はく…?
「…次の鬼ごっこまで時間あるから、その子達とここで待ってて」
-その子達?
海偉は女が話す意味が分からない。
-何を言っている?鬼ごっこ?
女は海偉の表情を見て、海偉の後ろを指さす。
「…その子達と…」
海偉は後ろを見て息を飲んだ。
そこには10人程度の子ども達が怯えた目で膝を抱え震えていた。
「……は…?」


