活気に溢れる町。色んな店が並び、皆笑顔で楽しそう。翼にとって目に映るものすべてが新鮮だった。【リアゾン】にいた時は町に出向くことも許されなかった。許されたのは学校と家の往復のみ。それ以外はいつも家にいて、ずっと部屋に篭っていた。何も出来なかった、許されなかった。それが翼の人生だった。
町にあるもの全てが翼にとって珍しいものであちこちに視線が移る。
キラッと太陽に反射してキラキラした物に視界が奪われる。それはおじさんが作る艶の綺麗な…

「飴細工」

御影が翼の耳元で囁く。

「あれは飴細工っていうんだ、食べ物だよ」
「食べれるの?」
「うん、近くでみる?」
「…ぇ、」

戸惑っていると

「ほらほら」

と店の前まで手を引いて行く。
おじさんは綺麗に器用に飴を作っていく。
飴の形は色々、ハートだったり動物の形だったり、色々な形が並んでいる。

「翼どれがいい?」
「え?」
「選んでいいよ?ねっ?」
「でも…」
「遠慮はなし」

そう言われて色々な飴を物色する。
太陽に照らされてキラキラ光る飴たち…なんて綺麗なんだろう。

「お嬢ちゃん、気に入ったのはあったか?」
「…えっと」
「ははっ、ごめんごめん急かしてるつもりはなかったんだ」

おじさんはじーっと翼のことをみる。

「お嬢ちゃん、リクエストも受け付けてるぞ」
「…リクエスト」
「俺はなんでも作れるからな、なんでも言っていいぞ」
「………」

-リクエスト…

「ぁの、じゃあ…薔薇は作れますか?」
「薔薇?花のか?」
「……はい」
「お安い御用だっ!ちょっと待ってな」

おじさんはニコッと笑って手際よく薔薇を作っていく。その光景を見逃すまいと翼は真剣にその工程を凝視する。そしてあっという間に花びらを作って薔薇は形を帯びていった。

「はいっ!薔薇の完成だ、どうぞお嬢ちゃん」

手渡された薔薇の飴。

-キラキラ光って凄く綺麗…。

「綺麗だね、翼」
「…綺麗」
「ははっそういわれると作ったかいがあるなあ」
「あの、お代は」

御影はカバンから財布を取り出す。

「いいよ、兄ちゃん」
「え?」
「今回はサービスだ」
「いや、それは」
「良いもん見せてもらったからなあ」

そういっておじさんは翼の顔をみて微笑んだ。
翼はコテンと頭を横に傾ける。
そして頭にポンっと手を乗せた。

「今日を楽しめよ、お嬢ちゃん」
「…………」
「じゃあ、行こうか翼」
「うん…ありがとうございました」

おじさんはひらひらと手を振り、綺麗な薔薇の飴細工だけが光に触れてキラキラ光っていた。