「はあ~久しぶりの町だ」
町付近まで使用人さんに車で送ってもらい歩いて町まで来た。
レンガ調の建物が並び、人が賑わう。
【リデルガ】に来てこんなに人の多いところは舞踏会以来だ。すれ違うのは人…人…人の多さに圧倒されてしまう。
「…わっ」
人が多くて前に進みたいのに人ごみに流され、足元がもつれた。
「翼!」
そんな翼の手をすかさず握り人ごみから救い出す御影。
「…ありがとう」
「ううん、人多いから」
御影はそのまま翼の手をぎゅっと握る。
「はぁ~」
人が多いなあ~すれ違う人、人、人、人の群れ。
愁は顔を隠すようにフードを被る。
最近色々あって町にも来れていなかった。
今日は気分転換にひとりで町に来ていた。
町の人は今何が起こっているか何も知らない人々ばかり。皆良い笑顔で笑い合っている。
-この笑顔を守らなくちゃな…。
ボーっと周りを見ていつもと変りないことを確かめる。
「おいっ!!!!次こんなことがあったら【暗血線】に報告するからなっ!!!」
急な怒鳴り声に辺りは注目する。
「すみません!すみません!このようなことがないよう言い聞かせますので…本当にすみません」
そこには中年の男に怒鳴られている愁と同い年くらいの女とまだ幼さが残る男の子の姿があった。
「ほらっ!香月も謝って!」
「………っ」
「すみません!香月!」
頑なに謝らない男の子。
「っけ、だから下層の奴らは!これだからしつけがなってねーんだ」
「すみません!すみません……」
「おねえちゃん……」
頭をペコペコ下げる姉らしき人物と意地でも頭を下げない男の子。
-なんか訳ありだなあ…まあこの町では珍しい光景ではないけどな…。
その光景を横目に愁は町の深層部分に向かって歩いて行った。


