チチっチチチっ
朝を知らす鳥の声で目が覚める。
思い瞼をゆっくり上げる。
喉がキリキリと渇き、喉に異変を感じる。
隣に目を向けると、御影がすぅすぅと寝息を立てて寝ている。まだ頭がぼーっとしているのかまだ頭が働かない。
窓から入る朝の光が金髪の髪をキラキラと輝かせる。
服から覗く白い肌…。
そっと翼は首元に触れる。

「…んっ」

くすぐったいのか少し身を捩る御影。

-美味しそう…

自然にそう思った。
今までずっとダンピールであることが嫌だった
血を求めておかしくなる自分が嫌で、ただの化け物のような気がしてずっとずっと感情を閉じ込めていた。
御影の血は飲めば飲むほど、もっと、もっと…と欲しくなる。

-噛みたい、飲みたい…喉が渇く…

眠っている御影の首元に思いきり嚙みついた。

「っ!」

声にならない声を上げる御影。

「ごくっごくっ」
「…はぁ…翼…」

御影の声が耳元で聞こえる。
その声で翼はで我に返り、咄嗟に離れる。
血を少し飲んだ事で頭が冷静になる。悪夢を見ただけで御影の部屋に訪れた昨日の自分が恥ずかしくなる。それに添い寝するなんて…色々な意味を含む謝罪の言葉だった。

「…ぁ、ごめんなさい」
「ううん、いいよ。思う存分飲んで」

御影は吸血行為の謝罪だと受け取り、首元を差し出してくる御影の姿は何だか色っぽく、翼はその姿を見て息を呑んだ。そして、また思いっきり噛んだ。

「…ぁ…躊躇ないね…んっそんな、喉渇いてたの?」
「はぁ…ごくっ」

御影はいつも血を飲んでる時、赤子をあやす様に翼の頭を撫でる。
翼はある程度飲んで、口を離す。

「…ふっ、もういいの?」

そして翼は気づいた。

「…御影は…」
「ん?」
「御影は飲まない…の?」

そう聞くと一瞬目を真ん丸にして、笑った。
翼は御影が血を飲んでいる所を一度も見たことがない。いつも与えてくれるだけで、翼の事を一度も噛んだことも無い、

「あぁ~、ん~そうだなあ」

そして翼の上に覆いかぶさった。

「…本当は…」

御影の細い指は翼の首元をつーぅと撫でる。

「んっ」
「そんな声出さないでよ、飲んでみたくなるじゃん」
「………っ」
「今は…まだ我慢…」

そういって翼の首元に顔を落とし首筋をペロッと舐めた。その御影の行動に身体が熱くなるのが分かった。

「色々あるんだ」
「色々…」

そう言い残して笑ってベットから出ると棚から何かを取り出す。

「俺にはこれがあるし、血液パック。血を薄めたものなんだけど」
「…ぇ、そういうのがあったの?じゃあ、私も…」
「だーめ、翼は俺の血だけ飲んでおけばいいの」
「…でも」
「俺、翼に嚙まれるの嫌いじゃないんだ。気持ちいし」

御影は翼の耳元に顔を近づける。

「知ってた?吸血中に気持ちいって感じたら相性がいいんだってこと」
「………え?」

-相性?

「あ、まだわかんないか」

御影は笑う。

-あ…この笑い方初めてみた。

いたずらっ子のような屈託のない笑顔。
翼は少し素の御影を見た気がした。

「はああ~よく寝た。」

御影はソファーに座って「ん~」と背伸びをする。

「まだ【学園】も再開になってないし…【喑血線】も町には異常はなかったって報告してたし…俺いるから、大丈夫か…」

そうあの騒動以来一か月まだ【学園】は封鎖されている。御影はぶつぶつ独り言を呟くと…。

「町にでもいこうか」

翼の知らない世界はまだまだある。