吸血事件が起こって一か月。
その後何の音沙汰もなく時は過ぎていった。
あの事件が嘘のように…。
愁は御影の屋敷に来ていた。

「…あの後報告あったか?」

愁が気怠い中に少し苛立ちを含んで言葉を紡ぐ。

「…ない」

暗血線(あんけつせん)】が調査したあと何らかの報告があると思っていたが何の音沙汰もない。
それどころか吸血事件があったことさえ世間には公表されていなかった。
なんらかの圧力がかかったとしか思えないこの状況。六花の権限を使っても何の情報も掴めないでいた。

「これは上がもみ消したってことで確定だよな」
「………」
「どうする?」
「…どうするって言ったって何もできないよ」
「…まあそうなんだけどよ、なんかモヤモヤすんじゃん。あんなん見た後だし」
「………………」

そりゃあんな場面をみたら何がどうなってあんなことになったのか全て知りたくなるのは当然だ。そして御影達は六花だ。
全てを把握しておきたいのは勿論のこと。
将来この国を担っていく為には全てのことを把握しておく必要がある。

紫檀(したん)様からご伝言です。『この件には首を突っ込むな』とのことです』

(かり)が言ったあの伝言。
あの人が関わっているということは絶対にあのくそ野郎も関わっているはず、ますます話がややこしくなるのは目にみえていた。
御影はジーッと窓の外を眺めた。

-あぁ、本当に厄介だ…




















ふわりと暖かい光に包まれ、花が咲き乱れる庭園。

『御影』

-俺の名前を呼んで笑う女の子…

『御影、大好きよ』

-俺の頭を撫でるその手…

『私の、大事な大事な-』