-大広間

「きゃはは」

少年は上半身をユラユラと揺らしながら笑う。
口周りにべっとりと赤い血を付け、自分の舌で舐める。
御影は思い出していた。
数週間前に起きた町の路地裏での吸血事件の事を…資料に書いていたのは

『未明、【リデルガ】内の町の路地裏にホームレスと思われる人物の死体が転がっていたという。その死体は干からび、まるでミイラのようだった死因は出血死。身体全ての血が抜き取られた状態。首元には吸血痕あり』

誰かに血を吸われ亡くなったとしか考えようのない事件。そんなことがあり得るのかと疑問に思っていたところだった。
その矢先、御影は血を飲み干すという光景を見てしまったのだ。これは信じるしかない。

「御影、どうする?捕まえる?」

隣の壱夜が少年から目を逸らさずに話しかけてくる。

「…………」

すると、その瞬間

「はっッ…うっううう」

少年は苦しみ始め

「あああぁぁぁあああ”」

胸を抑え苦しみに耐える。

「あ””、ぁ……」

パサっ

「……!」
「…ぇ」

少年は灰になって…消えた。

「御影!壱夜!」
「庵…」

その時庵が大広間に到着し二人に駆け寄る。

「どーなってんだあ~?」
「皆大丈夫か?」

そして大広間の扉から銃を持った海偉と愁も入ってくる。御影はさっきまで少年の姿をしていた灰に触れる。サラーっと手の間から灰が零れる。

「…なんで灰に?」

壱夜が呟く。

「おい、御影、これはどういうことだ?吸血種染みたやつが吸血種を襲う?これは一体どういうことか説明して貰おうか~」

海偉は御影の後頭部に銃をあてがいながら言う。

「…数週間前、町の路地裏で血を全て抜かれた遺体が発見されました」
「は?なんだよ、それ」
「聞いてねーぞ、御影」
「これはまだ俺と上のじじい共しか知らない話です」
「……ちっ」

海偉は銃を降ろし、苛立っている。

「今回のといい、路地裏での遺体…」

そして灰になった少年…御影は嫌な予感に頭が痛くなった。