いつも通りの昼下がりいつも通りの六花専用室。
「翼ちゃんのドレスどうしようか~」
「ドレス?」
「あ~ドレス」
愁がポツリと呟く。
「いや、なんであんたが反応すんのよ。私は翼ちゃんに聞いてるの~!」
「ドレスって舞踏会の?」
壱夜がお菓子を食べながらいう。
「そう!いつ買いに行こうか~」
「皆ドレスなの?」
「そうだよ!とびっきりおしゃれするんだよ!」
「毎年女子の気合いの入り方は別格だもんな~」
「そう…なんだ、真理愛ちゃんはもう決まってるの?」
「うん!もう決めた!」
「そっか…」
-ドレス…どうしよう。この辺りのお店も知らないし…
「いつ行く?私はいつでも大丈夫なんだけど…」
真理愛の言葉にきょっとんってしてると…。
「…え?どうしたの?」
「…一緒に買いに行ってくれるの?」
翼の言葉にその場にいた全員がきょっとんっとした顔で翼の方を見る。
「「「………」」」
その瞬間凄い勢いで真理愛は翼の肩をガシッと掴む。
「一緒に行くにきまってるでしょおおお!?なに言ってるのおお!ひとりで行かすわけないじゃん!」
「あはは、ここまでとは」
愁は笑いながら項垂れる。
「翼~、真理愛は初めから一緒にいこうっていうので話を進めてたんだよ~」
壱夜ボソッと呟く。
「そう、なの?」
「そうだよ!翼ちゃんのバカバカ~」
ひとりで買いにいくと思っていた翼は少しほっとする。
今まで何かするときは全部ひとりでやってきた。誰かに頼ったり、一緒に何かをしたことがなかったからだ。
いつも母は『自分でなんとかしなさい』と、たったその一言だけを翼つばさに向けていた。
もとから‘‘頼る‘‘ということが翼の頭にはなかったのだ。
「買わなくていいよ」
翼の耳元で聞き覚えのある落ち着いた声がする。
耳を介して聞こえてくる声はあまりにも刺激が強すぎて耳を抑え振り向く。
「み、かげ…」
翼が座るソファーの後ろに突然と現れた御影。
「急に出てこないでよ~、翼ちゃん驚いてるんじゃああん!」
「ていうか買わなくていいって?」
愁が御影の言葉を拾う。
「もう、用意してあるから」
「え?」
「用意してるの!?どんなドレス!?」
翼以上にはしゃぐ真理愛。
「秘密、当日のお楽しみ」
「へぇ~、御影やるじゃん~ん」
「お気に召してくれるかは分からないけど」
そういって笑う御影。
「へえ~御影が選んだドレスかあ~。楽しみだなあ~」
真理愛はニヤニヤ笑って御影をみる。
「確かに、気になるわ なっ壱夜」
「うん、御影がどんなの選ぶか想像つかねーもん」
そうして当日までの楽しみが増えたのであった。


