ガチャ…
【学園】の一角にある一際豪華な部屋。
「お~っす」
愁は部屋に入ると大きな机にゆったりとした座り心地のいい椅子に座る御影の姿を目視した。
御影は愁に視線を向け、手元の資料にまた視線を戻す。
その仕草だけで、傍からみると怖いくらいの美しさが際立つ。
「…なに怖い顔してんの」
声を掛けても書類から目を離さない御影。
「いや、別に」
「翼って子こっちに来てんだろ?一緒にいなくていいわけ?」
「真理愛に任せてる」
「はあ?お前が連れて来るってうるさかったのに何他人任せしてんだよ」
「………」
「たっくこれだから坊ちゃんは」
「愁だってそうだろ」
「お前は桁違いに坊ちゃんだろ!!」
御影と会話するのはなんか疲れる。
そう思って、ソファーにドカッと座る。
「…俺と居たら変に注目浴びるだろ」
御影のその言葉に「あぁ、確かに」と愁は納得する。
「…お前さあ、俺らのこと言ったの?」
「言ってない」
「…はあ」
頭を抱える。
こいつはいつもこうだ。肝心なことは口に出さない。
だからよく周りから誤解される。
それを分かってて、やっている節がある
一歩外に出れば笑顔の仮面を張り付けて柔らかい声色と丁寧な口調で関わる人を欺く。
本当のこいつは口が悪くて、どこか闇があって危なっかしい。
そんな御影の本性を知っているのは六花と真理愛、かぐやだけだ。
あ、いやまだいたな…まあ、あいつらはいいか…。
とまあ御影という吸血種はそんな人物だ。
「…言うから」
聞こえるか聞こえないか、そんな小さな声だった。
首が自然に御影の方に向く。
「言うから…俺から」
さっきより少しだけ大きな声で御影はその言葉を口にした。
愁は少し驚いた。
あの、御影が自ら”言葉”にしようとしていることに…
「おう!!!!」
俺は立ち上がって御影の頭をガシガシっと撫でる。
なんだか嬉しかったのだ。
今までの御影を知っているから余計に…。
「痛いって、力強いから」
零れる笑みを抑えきれなくて、少しずつ変わる御影みかげに少し…少しだけ安心した。
でも…まあほんの一部だけど。


