★
現実世界で、地震が起きてからひと月が経とうとしていた頃。
与那が消えて以来、乃花は毎日、100円ショップ「ギャン☆ドゥ」でアルバイトをしていた。与那がいないぶんを埋めるためだけでなく、品物の消えゆくさまを確かめる必要があったからだ。
乃花は記憶にある異世界の物語を脳内再生しながら、最後の戦いに必要な物品をノートに書き込んでゆく。
――絶対に、わたしの力が必要になるはずだから!
そう思いながら、しかるべき時が来るのを待ち続けていた。
そして、時は来た。
突然、おもちゃコーナーにあるスーパーボールが枯渇したのだ。それはまさに、与那が魔物との戦いを迎えている証拠だった。
乃花はメモと陳列棚を見比べながら、しばらく考え込んでいたが、思い立って勢いよく顔を上げた。
「店長、聞いてください!」
乃花が宇賀店長に向かって声を発すると、店長が平身低頭で乃花に駆け寄ってきた。
「あの、高根様……今日はどんな御用でしょうか」
店長はバイトの子が、まさか異世界を旅してきた大企業の社長令嬢だとは思いもしなかった。時空を超えた展開を目のあたりにした店長は、乃花の指示に従って動くしかない。そうでないと与那を助けられないのだろうと悟っていた。
「いろいろ必要なものがあるので、わたし、直接倉庫に取りに行ってきます! ですから店番は店長がお願いします!」
「ひゃっ、ひゃいっ! どうぞご自由にっ!」
乃花は胸元からスマホを取り出し、その場で執事に電話をかける。
「服部、わたしよ。よく聞いて。すぐにヘリを一機、よこしてほしいの。――ええ、なるべく飛ばせるやつを。――え、国土交通省? 構わないわ。うまく黙らせておいて」
電話を切ってまもなく、ブルルルルと重厚なヘリのブレードスラップ音が店の上空から聞こえてきた。乃花は「では行ってまいります!」と店長に敬礼のポーズをして店の窓を開く。
すると頭上から梯子が吊り下がってきた。窓の冊子に足をかけて勢いよく梯子に飛び乗る。
乃花の姿は空へと舞い上がり、ヘリコプターの音は遠ざかっていった。店長はその様子を茫然と見ながら、えもいわれぬ虚空感に打ちひしがれていた。
はたして未知の体験をともにしてきた高根と与那の強固な絆の間に、この俺が割り込むことはできるのだろうか、と。
現実世界で、地震が起きてからひと月が経とうとしていた頃。
与那が消えて以来、乃花は毎日、100円ショップ「ギャン☆ドゥ」でアルバイトをしていた。与那がいないぶんを埋めるためだけでなく、品物の消えゆくさまを確かめる必要があったからだ。
乃花は記憶にある異世界の物語を脳内再生しながら、最後の戦いに必要な物品をノートに書き込んでゆく。
――絶対に、わたしの力が必要になるはずだから!
そう思いながら、しかるべき時が来るのを待ち続けていた。
そして、時は来た。
突然、おもちゃコーナーにあるスーパーボールが枯渇したのだ。それはまさに、与那が魔物との戦いを迎えている証拠だった。
乃花はメモと陳列棚を見比べながら、しばらく考え込んでいたが、思い立って勢いよく顔を上げた。
「店長、聞いてください!」
乃花が宇賀店長に向かって声を発すると、店長が平身低頭で乃花に駆け寄ってきた。
「あの、高根様……今日はどんな御用でしょうか」
店長はバイトの子が、まさか異世界を旅してきた大企業の社長令嬢だとは思いもしなかった。時空を超えた展開を目のあたりにした店長は、乃花の指示に従って動くしかない。そうでないと与那を助けられないのだろうと悟っていた。
「いろいろ必要なものがあるので、わたし、直接倉庫に取りに行ってきます! ですから店番は店長がお願いします!」
「ひゃっ、ひゃいっ! どうぞご自由にっ!」
乃花は胸元からスマホを取り出し、その場で執事に電話をかける。
「服部、わたしよ。よく聞いて。すぐにヘリを一機、よこしてほしいの。――ええ、なるべく飛ばせるやつを。――え、国土交通省? 構わないわ。うまく黙らせておいて」
電話を切ってまもなく、ブルルルルと重厚なヘリのブレードスラップ音が店の上空から聞こえてきた。乃花は「では行ってまいります!」と店長に敬礼のポーズをして店の窓を開く。
すると頭上から梯子が吊り下がってきた。窓の冊子に足をかけて勢いよく梯子に飛び乗る。
乃花の姿は空へと舞い上がり、ヘリコプターの音は遠ざかっていった。店長はその様子を茫然と見ながら、えもいわれぬ虚空感に打ちひしがれていた。
はたして未知の体験をともにしてきた高根と与那の強固な絆の間に、この俺が割り込むことはできるのだろうか、と。



