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その頃、アルトゥスが宮殿から姿を見せた。よろめきながら進む足取りはかつての力強さも威厳も失っていた。敷地を出たところで歩道の石畳につまずき倒れ込む。
「ア……アルトゥス様、大丈夫でございますか!?」
兵士のひとりがアルトゥスに気づき、あわてて駆け寄る。アルトゥスは自力で立ち上がった。
「余のことは構うな……その余力があれば一匹でも多くの魔物を倒すのだ……」
その姿を見て、兵士は驚きの声をもらした。兵士の目に映るアルトゥスは、背の丸くなった皺だらけの老人で、覇気はすっかり失われていた。
「アルトゥス様……いったいなにが……」
「はぁはぁ……余は最期まで帝国を守るために戦うだけだ……」
アルトゥスはよろよろとゲートに向かって歩き出す。「逃げ出したエルフはどこだ、どこだ、どこだ……」とつぶやきながら。
突然、上空の雲が渦を作り始め、その渦の中心が地上に向かって伸びてゆく。向かう先にはアルトゥスの姿があった。アルトゥスが空を見上げると、黒霧はまるで獲物に喰らいつく蛇のようにアルトゥスの口に飛び込んでゆく。
「うぐっ……ぐはぁ……!」
アルトゥスは口を閉ざすことができず、黒霧を体内に吸い込んでゆく。次第にアルトゥスの体は漆黒に染められていった。黒霧が吸収されると、アルトゥスの全身から不気味なオーラが立ちのぼる。
アルトゥスは自我を失い、ふたたび歩み出した。老人の姿でありながら、一歩一歩が力強い。まるで地面をえぐり、支配の轍を残すかのように。
『この帝国は壊さねばならぬ……森羅万象が尊ばれる、かつてのラスカを取り戻すために……』
重々しく響くその異質な声は、アルトゥスの持つ声とは明らかに異なっていた。
その身体は未知の力が働いたかのように宙へと引き上げられると、音もなく忽然とその場から消えてしまった。
「アルトゥス様が……なにかに取り憑かれていた……」
理解できない光景を目の当たりにした兵士は、放心した表情でその場にへたり込む。
アルトゥスが消えた石畳の上には、折れた小さな杖の残骸が転がっていた。
その頃、アルトゥスが宮殿から姿を見せた。よろめきながら進む足取りはかつての力強さも威厳も失っていた。敷地を出たところで歩道の石畳につまずき倒れ込む。
「ア……アルトゥス様、大丈夫でございますか!?」
兵士のひとりがアルトゥスに気づき、あわてて駆け寄る。アルトゥスは自力で立ち上がった。
「余のことは構うな……その余力があれば一匹でも多くの魔物を倒すのだ……」
その姿を見て、兵士は驚きの声をもらした。兵士の目に映るアルトゥスは、背の丸くなった皺だらけの老人で、覇気はすっかり失われていた。
「アルトゥス様……いったいなにが……」
「はぁはぁ……余は最期まで帝国を守るために戦うだけだ……」
アルトゥスはよろよろとゲートに向かって歩き出す。「逃げ出したエルフはどこだ、どこだ、どこだ……」とつぶやきながら。
突然、上空の雲が渦を作り始め、その渦の中心が地上に向かって伸びてゆく。向かう先にはアルトゥスの姿があった。アルトゥスが空を見上げると、黒霧はまるで獲物に喰らいつく蛇のようにアルトゥスの口に飛び込んでゆく。
「うぐっ……ぐはぁ……!」
アルトゥスは口を閉ざすことができず、黒霧を体内に吸い込んでゆく。次第にアルトゥスの体は漆黒に染められていった。黒霧が吸収されると、アルトゥスの全身から不気味なオーラが立ちのぼる。
アルトゥスは自我を失い、ふたたび歩み出した。老人の姿でありながら、一歩一歩が力強い。まるで地面をえぐり、支配の轍を残すかのように。
『この帝国は壊さねばならぬ……森羅万象が尊ばれる、かつてのラスカを取り戻すために……』
重々しく響くその異質な声は、アルトゥスの持つ声とは明らかに異なっていた。
その身体は未知の力が働いたかのように宙へと引き上げられると、音もなく忽然とその場から消えてしまった。
「アルトゥス様が……なにかに取り憑かれていた……」
理解できない光景を目の当たりにした兵士は、放心した表情でその場にへたり込む。
アルトゥスが消えた石畳の上には、折れた小さな杖の残骸が転がっていた。



