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「おーいルーザー、これからパチェットを狩りに行くんだけど、手が空いていたら手伝ってくれないか?」
広場の片隅に座り込んだルーザーに呼びかけたが、返事はない。ああ、戦力にはならなそうだと与那は諦めの気持ちを抱いた。
最近、ルーザーは意気消沈しているようで、しばしば鞘に収まったままの刀を抱きしめて小さくなっている。
「どうしたんだよ、ルーザーらしくないな」
「ううう、兄貴ィィィ、拙者、これでは兄貴の役に立てないっすよ。ボクデン殿にも申しわけが立たないっす」
鞘から剣を抜き、哀れなほど錆びついた刀身を示して見せた。刻印の文字すら読むことができない。
なるほど、意気消沈している原因はこれだったのか。
そう思うと同時に、与那は名案を思いついた。
「ルーザー、それが落ち込んでいる原因なら、解決する方法があるんだ!」
「まじっすか!?」
与那はポケットに手を突っ込み、目的の品物を取り出す。
じゃじゃん! 『サビ落とし フランシスコ・サビキエル君』と『万能砥石 刃磨き野郎』、それから定番の『マイクロファイバー布巾』!
レベルアップしたおかげで、300円のさび落としアイテムが使用可能となった。
「へぇー、この薬と四角い石で剣が復活するんすか?」
ルーザーは眉根を寄せて尋ねる。
「まあ、祈りながら見ていろよ」
サビ落としをチューブから絞り出して刃身に塗り、与那は作業を始めた。
さび落としで粗大な錆を剥がし、砥石で刀身を磨きあげる。それから小一時間が経った。その間、ルーザーは目を閉じ両手を握りしめて祈りを捧げていた。
「ふう、これでどうだ」
与那は疲労の溜まった手を揉みほぐしながら満足げに剣を眺める。
ルーザーが目を開くと、刀身は鏡のように輝き、光を浴びて波紋のように見える模様を浮かび上がらせた。剣の刻印もくっきりと読むことができる。
「す、すげえ! 剣が白銀の輝きを取り戻したっす!」
感動のあまり百面相をし、それから勢いよく剣の前で土下座をした。
「ははあーっ! ボクデン殿、これからも拙者をお守りください!」
「いや、ルーザーが剣を守ってくれ」
けれどルーザーは与那の注意を華麗にスルーし、まじまじと剣の刻印を見てつぶやく。
「けど、異国の言葉を読めないのは残念っす。兄貴、読めますか?」
「ん、まあな……」
「え、マジっすか!? どんな意味なんすか!」
ルーザーは刻印の文字の意味に心が高ぶっている。けれど、与那はそれを読むのが気まずかった。なぜなら、刀身に刻まれていたのは――。
――『春雨』、である。
それは食べ物の名前だろうよ、しかもふにゃふにゃしているじゃん、と与那は突っ込みたくなった。
けれど『春』の『雨』だと説明すると、ルーザーは「かっけええええええ!!!」と、えらく感動した。その感動は永久保証してあげようと心に決めた与那であった。
「ところでルーザーって、自身のこと『拙者』って呼んでいるのはボクデンの影響なんだろ?」
「そうっす。ボクデン殿は自身を『儂』って言っていましたけど、『拙者』と言うと遠慮深そうに聞こえるって教わったもので」
へへへと照れくさそうな顔をするが、ルーザーは遠慮深さとは無縁である。
「とにかく遠慮深く生きていきたいので、この剣はあと100年は抜かないでいようと思います」
そう言いながら剣を鞘に納めるのを与那は制した。
「こら、学習しろ! 定期的に抜け! その前に刃を研ぐ練習をするんだ!」
「ひいい~、面倒くさいのはまっぴらごめんです~。後にしてください~」
「練習するなら今でしょ!」
と言いあいながらも、かつて現実世界に存在していた歴史上の人物が異世界の異種族と接点を持ち、影響を与えたなんて感慨深い。
与那は不思議な運命の因果を感じながら、ルーザーの剣を研ぐ練習を見守っていた。
「おーいルーザー、これからパチェットを狩りに行くんだけど、手が空いていたら手伝ってくれないか?」
広場の片隅に座り込んだルーザーに呼びかけたが、返事はない。ああ、戦力にはならなそうだと与那は諦めの気持ちを抱いた。
最近、ルーザーは意気消沈しているようで、しばしば鞘に収まったままの刀を抱きしめて小さくなっている。
「どうしたんだよ、ルーザーらしくないな」
「ううう、兄貴ィィィ、拙者、これでは兄貴の役に立てないっすよ。ボクデン殿にも申しわけが立たないっす」
鞘から剣を抜き、哀れなほど錆びついた刀身を示して見せた。刻印の文字すら読むことができない。
なるほど、意気消沈している原因はこれだったのか。
そう思うと同時に、与那は名案を思いついた。
「ルーザー、それが落ち込んでいる原因なら、解決する方法があるんだ!」
「まじっすか!?」
与那はポケットに手を突っ込み、目的の品物を取り出す。
じゃじゃん! 『サビ落とし フランシスコ・サビキエル君』と『万能砥石 刃磨き野郎』、それから定番の『マイクロファイバー布巾』!
レベルアップしたおかげで、300円のさび落としアイテムが使用可能となった。
「へぇー、この薬と四角い石で剣が復活するんすか?」
ルーザーは眉根を寄せて尋ねる。
「まあ、祈りながら見ていろよ」
サビ落としをチューブから絞り出して刃身に塗り、与那は作業を始めた。
さび落としで粗大な錆を剥がし、砥石で刀身を磨きあげる。それから小一時間が経った。その間、ルーザーは目を閉じ両手を握りしめて祈りを捧げていた。
「ふう、これでどうだ」
与那は疲労の溜まった手を揉みほぐしながら満足げに剣を眺める。
ルーザーが目を開くと、刀身は鏡のように輝き、光を浴びて波紋のように見える模様を浮かび上がらせた。剣の刻印もくっきりと読むことができる。
「す、すげえ! 剣が白銀の輝きを取り戻したっす!」
感動のあまり百面相をし、それから勢いよく剣の前で土下座をした。
「ははあーっ! ボクデン殿、これからも拙者をお守りください!」
「いや、ルーザーが剣を守ってくれ」
けれどルーザーは与那の注意を華麗にスルーし、まじまじと剣の刻印を見てつぶやく。
「けど、異国の言葉を読めないのは残念っす。兄貴、読めますか?」
「ん、まあな……」
「え、マジっすか!? どんな意味なんすか!」
ルーザーは刻印の文字の意味に心が高ぶっている。けれど、与那はそれを読むのが気まずかった。なぜなら、刀身に刻まれていたのは――。
――『春雨』、である。
それは食べ物の名前だろうよ、しかもふにゃふにゃしているじゃん、と与那は突っ込みたくなった。
けれど『春』の『雨』だと説明すると、ルーザーは「かっけええええええ!!!」と、えらく感動した。その感動は永久保証してあげようと心に決めた与那であった。
「ところでルーザーって、自身のこと『拙者』って呼んでいるのはボクデンの影響なんだろ?」
「そうっす。ボクデン殿は自身を『儂』って言っていましたけど、『拙者』と言うと遠慮深そうに聞こえるって教わったもので」
へへへと照れくさそうな顔をするが、ルーザーは遠慮深さとは無縁である。
「とにかく遠慮深く生きていきたいので、この剣はあと100年は抜かないでいようと思います」
そう言いながら剣を鞘に納めるのを与那は制した。
「こら、学習しろ! 定期的に抜け! その前に刃を研ぐ練習をするんだ!」
「ひいい~、面倒くさいのはまっぴらごめんです~。後にしてください~」
「練習するなら今でしょ!」
と言いあいながらも、かつて現実世界に存在していた歴史上の人物が異世界の異種族と接点を持ち、影響を与えたなんて感慨深い。
与那は不思議な運命の因果を感じながら、ルーザーの剣を研ぐ練習を見守っていた。



