平和を取り戻したヴェンタスは、今までよりも活気に満ち溢れていた。
戦いに参加したダークエルフたちは村の入り口にある小屋へと隔離された。女性や子供たちは監禁され――とはいっても広場にテントを張り、エルフたちとともに生活を営んでいた。彼らを管理下に置くことで反逆の火種を消すことができた。
対立などと無縁な子どもたちはすぐに仲良くなり、毎日のように皆で与那にまとわりついてくる。
「ヨナー、ポテチってやつまたちょうだーい!」
「もうだめだ、おまえらが取りすぎてなくなっちまったからな」
子供の人数が増えたせいで、おもちゃとお菓子がすぐに『SOLD OUT』を迎えてしまう。けれど子供に遠慮の二文字はない。
「ごちゃごちゃいわないでポケットよこせー!」
ピッピとポッポはダークエルフの子どもたちとつるみ、洗濯中だった与那のパンツを奪い去る事態となった。
「ちょっ……、俺のパンツ持っていくなよぉぉ!」
「ぷはは、ヨナがパンツ失くしたら、救世主じゃなくなっちゃうもんねー」
メイサは子供たちと戯れる与那を見て楽しそうに笑う。張り詰めている雰囲気のメイサが柔和になったのは、両親が生きているという希望が見えたからだ。
ハーネスとプランは一時、死の淵をさまよったが、エルフのヒーリング魔法と部下たちの賢明な介護により劇的な復活を遂げた。
体調が回復した後、村長とアスタロットが尋問にあたった。アスタロットが凄みを利かせて問い詰めると、ハーネスは小動物のように震え上がった。
「今まで攫った仲間の遺体を返せ! せめて弔ってやらなければ気が済まないからな」
故郷を失い監視下に置かれた今、エルフへの反抗は自身と仲間の死にも等しい。拷問をするまでもなく自白をした。
「ひええ、正直告白します! 俺たちは誰も殺してなんかいないです!」
「はぁ? だが、それなら首を斬ると言った理由はなんだ」
以前、小屋にエルフたちが捕らえられた時、ハーネスは「首を切ってあのお方に捧げるのだ」と言っていた。けれど真相は――。
「死んだことにすれば、取り戻そうと躍起になることはないと思ったんです!」
「なんだと!? 罪を逃れるための言いわけではないだろうな」
「ほんとうです! ピチピチの状態で帝都へ送り届けたんです。帝王は生きたエルフをご所望でしたから!」
エルフの持つ長寿の魔力を我が物にし、不老不死を希求する帝王。エルフたちは「狩られる側」であり、ダークエルフもまた「利用された側」だったのだ。
「なるほどな……ならば捕らえられたエルフは皆、帝都で監禁されているということか」
アスタロットは納得したように深いため息をつき、視線を村長に向けた。
「村長、ならばするべきことは決まったようなものです」
ラウロ村長はうなずき、村の者を集めて決意を表明する。
「皆、聞くがよい! 儂たちの仲間は帝都に囚われている。彼らを救うために、ダークエルフたちから情報を集め、帝都に潜入するのだ!」
すると周囲の視線がいっせいに与那を捉えた。与那はエルフにとって、帝都に潜入できる最高の協力者だ。人間でありながらエルフの味方となった救世主。これほど好条件の人材が、期待を抱かれないはずがない。
熱い視線を一心に受ける与那。けれど誰に言われるまでもなく、与那の心にはエルフたちを助けるための使命感が芽生えていた。
誰かの力になることこそが、自身の生きる証であるかのように。
戦いに参加したダークエルフたちは村の入り口にある小屋へと隔離された。女性や子供たちは監禁され――とはいっても広場にテントを張り、エルフたちとともに生活を営んでいた。彼らを管理下に置くことで反逆の火種を消すことができた。
対立などと無縁な子どもたちはすぐに仲良くなり、毎日のように皆で与那にまとわりついてくる。
「ヨナー、ポテチってやつまたちょうだーい!」
「もうだめだ、おまえらが取りすぎてなくなっちまったからな」
子供の人数が増えたせいで、おもちゃとお菓子がすぐに『SOLD OUT』を迎えてしまう。けれど子供に遠慮の二文字はない。
「ごちゃごちゃいわないでポケットよこせー!」
ピッピとポッポはダークエルフの子どもたちとつるみ、洗濯中だった与那のパンツを奪い去る事態となった。
「ちょっ……、俺のパンツ持っていくなよぉぉ!」
「ぷはは、ヨナがパンツ失くしたら、救世主じゃなくなっちゃうもんねー」
メイサは子供たちと戯れる与那を見て楽しそうに笑う。張り詰めている雰囲気のメイサが柔和になったのは、両親が生きているという希望が見えたからだ。
ハーネスとプランは一時、死の淵をさまよったが、エルフのヒーリング魔法と部下たちの賢明な介護により劇的な復活を遂げた。
体調が回復した後、村長とアスタロットが尋問にあたった。アスタロットが凄みを利かせて問い詰めると、ハーネスは小動物のように震え上がった。
「今まで攫った仲間の遺体を返せ! せめて弔ってやらなければ気が済まないからな」
故郷を失い監視下に置かれた今、エルフへの反抗は自身と仲間の死にも等しい。拷問をするまでもなく自白をした。
「ひええ、正直告白します! 俺たちは誰も殺してなんかいないです!」
「はぁ? だが、それなら首を斬ると言った理由はなんだ」
以前、小屋にエルフたちが捕らえられた時、ハーネスは「首を切ってあのお方に捧げるのだ」と言っていた。けれど真相は――。
「死んだことにすれば、取り戻そうと躍起になることはないと思ったんです!」
「なんだと!? 罪を逃れるための言いわけではないだろうな」
「ほんとうです! ピチピチの状態で帝都へ送り届けたんです。帝王は生きたエルフをご所望でしたから!」
エルフの持つ長寿の魔力を我が物にし、不老不死を希求する帝王。エルフたちは「狩られる側」であり、ダークエルフもまた「利用された側」だったのだ。
「なるほどな……ならば捕らえられたエルフは皆、帝都で監禁されているということか」
アスタロットは納得したように深いため息をつき、視線を村長に向けた。
「村長、ならばするべきことは決まったようなものです」
ラウロ村長はうなずき、村の者を集めて決意を表明する。
「皆、聞くがよい! 儂たちの仲間は帝都に囚われている。彼らを救うために、ダークエルフたちから情報を集め、帝都に潜入するのだ!」
すると周囲の視線がいっせいに与那を捉えた。与那はエルフにとって、帝都に潜入できる最高の協力者だ。人間でありながらエルフの味方となった救世主。これほど好条件の人材が、期待を抱かれないはずがない。
熱い視線を一心に受ける与那。けれど誰に言われるまでもなく、与那の心にはエルフたちを助けるための使命感が芽生えていた。
誰かの力になることこそが、自身の生きる証であるかのように。



