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与那は、まさかこんなことが起きるものかと驚愕していた。
さきほど『SOLD OUT』となってから30分も経っていない。けれど、ポケットからはビニールシートが無尽蔵に出てきていた。積みあがったビニールシートの量は数百枚に及んだ。
――現実世界の誰かが、意図を察して協力をしてくれたのだろうか。そうだとすると……高根さんなのか?
解けない疑問を抱いたその時、遠くから聞こえてくる足音に気づいた。振り返ると、アスタロットが10人ほどの仲間を連れて駆けつけてきた。ルーザーの姿もあった。
「メイサとナヨナヨ、待たせたな!」
「アスタロット、待っていたよ。手伝ってほしいことがあるの。このビニールシートを広げて繋げてほしいんだ」
ビニールシートを羽ばたかせるメイサは、すでに与那の作戦の全容を聞いていた。
「それをどうするつもりなんだ?」
「ヨナの提案で、敵をはめるための罠を作っているの」
メイサがいつになく真剣な顔で作戦を説明すると、アスタロットはすんなりと納得した。
「ふっ、救世主のアイディアなら従うしかあるまい。私に任せておけ」
するとアスタロットは「これは最近覚えた魔法だから成功の保証はないがな」と断ってから詠唱を開始した。
――『物質同士をきれいに配置させる魔法』
するとビニールシートはみずから蝶のように空を飛び、舞いながら着陸し隙間なく並んだ。さらに――。
――『物質を狙った位置で切断する魔法』
浮いたクラフトテープが操られるように空中で引き伸ばされて切断され、ビニールシート同士を貼りあわせてゆく。寸分違わぬ精度に与那は度肝を抜かれた。
「すげえ! 魔法の効果が具体的すぎるぅぅぅ!」
「アスタロットはスキマ魔法、たくさん習得しているのよ」
「そういうニッチなのを、スキマ魔法っていうのかぁぁぁ!」
与那は魔法の繰り出すみごとな配置に感動を覚えていた。100円ショップで幾何学的な配列で品物を並べていた頃を思い出す。
「あと、これもお願いします!」
じゃじゃん! 『五寸釘(大)』と『黒ゴムハンマー(小)』!
ハンマーを人数分用意し、皆でビニールシートを五寸釘で固定してゆく。エルフは器用な種族なようで、作業は予想以上にはかどった。(ちなみにメイサだけは器用ではないようで手こずっていた)
与那はさらにアイテムを取り出す。
じゃじゃん! 『アブラカタブラ社製サラダオイル』!
最後にシートの上にサラダオイルをぶちまけて罠は完成だ。
「これで兵器の動きは封殺できるはずです。名付けて『摩擦係数・ゼロミッション』!」
与那が考えたのは、滑る地面を作りあげ、兵器の足を滑らせてしまおうという策略だ。
「シンプルだが理にかなった作戦だな」
アスタロットはしきりに感心している。さらに、「ならば罠を隠した方がよいだろう」と言って魔法を唱えた。
――『物質をカモフラージュする魔法』
するとビニールシートの色が変化し、地面と同化した。これで一見、気づかれることはない。
「ありがとうございます。みんなでヴェンタスを守り抜きましょう!」
与那はアスタロットの手を握りしめて力強くうなずいた。ひとつの目的のために力を合わせることに、種族の違いなんて関係ない。アスタロットは目を伏せ、自身を省みるようにつぶやいた。
「ふっ、どうやら私はナヨナヨのことを軽んじていたようだ。ヴェンタスのためにここまで尽力する人間がいるとは思いもしなかった。もはや仲間以外の何者でもないな」
「いやぁ、世話になっているので、こんな形でしかお礼ができないですけど」
与那は褒められて照れくさくなる。異種族に仲間として認めてもらうことは、妙に胸がこそばゆかった。
アスタロットの魔法のおかげで作業は神速で終了し、時間に余裕ができた。
「あっ、そうだ!」
そこで与那はあることを思いつき、ポケットから100円アイテムを取り出す。
じゃじゃん! 『フェイスペイントセット』、『ヘアチョーク』、それに『タトゥーシール』!
「よし、みんな! これを使って戦化粧をするぞ!」
「え、なにこれ? 魔法増強の効果でもあるの?」
眉根を寄せたメイサに、与那は自信満々に答えた。
「もちろんさ。これが俺たちの秘密兵器だ! メイサ、動くなよ」
与那はメイサの顔を大胆なラインや模様でペイントする。次にヘアチョークを使って髪を染める。青や赤、緑の鮮やかな色が髪に映え、まるで戦士のような姿に変わっていく。最後にドラゴンや虎のデザインのシールを腕に貼り付けた。
「おおっ、メイサ、なんだか強そうだ!」
「えっ、そ、そう? じゃあみんなでやらなくっちゃ!」
エルフたちは互いに戦化粧をしあいながら戦闘意欲を高めていった。仕上がったところで与那が叫ぶ。
「これで俺たちみんな、一人前の魔法戦士だ! 約一名を除くけどっ!」
「いや、この創意工夫は魔法以上の魔法だ。ナヨナヨという救世主がいるかぎり、私たちに敗北という運命は訪れない! 絶対に勝つぞ!」
アスタロットが拳を突き上げると、仲間たちもそれに続いた。
「「「「「おうっ!」」」」」
与那は、まさかこんなことが起きるものかと驚愕していた。
さきほど『SOLD OUT』となってから30分も経っていない。けれど、ポケットからはビニールシートが無尽蔵に出てきていた。積みあがったビニールシートの量は数百枚に及んだ。
――現実世界の誰かが、意図を察して協力をしてくれたのだろうか。そうだとすると……高根さんなのか?
解けない疑問を抱いたその時、遠くから聞こえてくる足音に気づいた。振り返ると、アスタロットが10人ほどの仲間を連れて駆けつけてきた。ルーザーの姿もあった。
「メイサとナヨナヨ、待たせたな!」
「アスタロット、待っていたよ。手伝ってほしいことがあるの。このビニールシートを広げて繋げてほしいんだ」
ビニールシートを羽ばたかせるメイサは、すでに与那の作戦の全容を聞いていた。
「それをどうするつもりなんだ?」
「ヨナの提案で、敵をはめるための罠を作っているの」
メイサがいつになく真剣な顔で作戦を説明すると、アスタロットはすんなりと納得した。
「ふっ、救世主のアイディアなら従うしかあるまい。私に任せておけ」
するとアスタロットは「これは最近覚えた魔法だから成功の保証はないがな」と断ってから詠唱を開始した。
――『物質同士をきれいに配置させる魔法』
するとビニールシートはみずから蝶のように空を飛び、舞いながら着陸し隙間なく並んだ。さらに――。
――『物質を狙った位置で切断する魔法』
浮いたクラフトテープが操られるように空中で引き伸ばされて切断され、ビニールシート同士を貼りあわせてゆく。寸分違わぬ精度に与那は度肝を抜かれた。
「すげえ! 魔法の効果が具体的すぎるぅぅぅ!」
「アスタロットはスキマ魔法、たくさん習得しているのよ」
「そういうニッチなのを、スキマ魔法っていうのかぁぁぁ!」
与那は魔法の繰り出すみごとな配置に感動を覚えていた。100円ショップで幾何学的な配列で品物を並べていた頃を思い出す。
「あと、これもお願いします!」
じゃじゃん! 『五寸釘(大)』と『黒ゴムハンマー(小)』!
ハンマーを人数分用意し、皆でビニールシートを五寸釘で固定してゆく。エルフは器用な種族なようで、作業は予想以上にはかどった。(ちなみにメイサだけは器用ではないようで手こずっていた)
与那はさらにアイテムを取り出す。
じゃじゃん! 『アブラカタブラ社製サラダオイル』!
最後にシートの上にサラダオイルをぶちまけて罠は完成だ。
「これで兵器の動きは封殺できるはずです。名付けて『摩擦係数・ゼロミッション』!」
与那が考えたのは、滑る地面を作りあげ、兵器の足を滑らせてしまおうという策略だ。
「シンプルだが理にかなった作戦だな」
アスタロットはしきりに感心している。さらに、「ならば罠を隠した方がよいだろう」と言って魔法を唱えた。
――『物質をカモフラージュする魔法』
するとビニールシートの色が変化し、地面と同化した。これで一見、気づかれることはない。
「ありがとうございます。みんなでヴェンタスを守り抜きましょう!」
与那はアスタロットの手を握りしめて力強くうなずいた。ひとつの目的のために力を合わせることに、種族の違いなんて関係ない。アスタロットは目を伏せ、自身を省みるようにつぶやいた。
「ふっ、どうやら私はナヨナヨのことを軽んじていたようだ。ヴェンタスのためにここまで尽力する人間がいるとは思いもしなかった。もはや仲間以外の何者でもないな」
「いやぁ、世話になっているので、こんな形でしかお礼ができないですけど」
与那は褒められて照れくさくなる。異種族に仲間として認めてもらうことは、妙に胸がこそばゆかった。
アスタロットの魔法のおかげで作業は神速で終了し、時間に余裕ができた。
「あっ、そうだ!」
そこで与那はあることを思いつき、ポケットから100円アイテムを取り出す。
じゃじゃん! 『フェイスペイントセット』、『ヘアチョーク』、それに『タトゥーシール』!
「よし、みんな! これを使って戦化粧をするぞ!」
「え、なにこれ? 魔法増強の効果でもあるの?」
眉根を寄せたメイサに、与那は自信満々に答えた。
「もちろんさ。これが俺たちの秘密兵器だ! メイサ、動くなよ」
与那はメイサの顔を大胆なラインや模様でペイントする。次にヘアチョークを使って髪を染める。青や赤、緑の鮮やかな色が髪に映え、まるで戦士のような姿に変わっていく。最後にドラゴンや虎のデザインのシールを腕に貼り付けた。
「おおっ、メイサ、なんだか強そうだ!」
「えっ、そ、そう? じゃあみんなでやらなくっちゃ!」
エルフたちは互いに戦化粧をしあいながら戦闘意欲を高めていった。仕上がったところで与那が叫ぶ。
「これで俺たちみんな、一人前の魔法戦士だ! 約一名を除くけどっ!」
「いや、この創意工夫は魔法以上の魔法だ。ナヨナヨという救世主がいるかぎり、私たちに敗北という運命は訪れない! 絶対に勝つぞ!」
アスタロットが拳を突き上げると、仲間たちもそれに続いた。
「「「「「おうっ!」」」」」



