お昼下がり、家から徒歩数十分の場所にあるカフェにて。
「はい、到着!」
柚が連れて来られた場所は一見普通の日本家屋だった。
カフェと言うから現代みたいなカフェを想像していた柚はその佇まいに少し違和感を覚える。由緒正しき茶屋みたいな雰囲気を出していた。
「此処は日本庭園を眺めるカフェなんだ、良い眺めだろ」
綺麗に切り揃えられた植木に敷き詰められた丸砂利、二匹の魚が泳いでいる小さめの池もある。
ごく普通に生け垣を跨いでカフェの中に入る勇に驚きながらも、真似して跨ぐ。
ただでさえ着物に慣れていないのに、腰まである生け垣を跨ぐのは難しかった。
少し躊躇したが結局、庭に入ることになってしまった。
(本当にこの入り方で良かったのかな、、、?)
縁側で座っていると、勇がまるで自分の家のようにカフェの中に上がっていく。
どうやら勇は常連客のようだった。
そして勝手知ったる様子で戸棚から茶葉と急須やらのお茶のセットを運んで、行き道で買ってきた羊羹を箱から出す。
「はいどーぞ」
少し苦そうなお茶とつやつやの羊羹。一緒に食べたら美味しいだろう。
「この羊羹は本当に絶品で、数量限定だからすぐなくなるんだが買えて良かった」
「へ、へぇ」
ここまで来ると流されやすい柚も疑い始める。
(セルフサービスと言えば聞こえは良いけど、流石にお客さんがお湯を沸かすとこから始めないと思う、、、明治時代でも、多分)
「あの、、、ここって何て名前のカフェですか?」
人の家に不法侵入していないでほしいと心から願う。
だが、そんな願いは虚しいに等しかった。
「カフェ・サクマだ」
終わった。
柚の頭の中で人生終了の鐘が鳴っている。
仮にも警察官だよね!?という言葉は寸のところで飲み込んだ。
「あの、、、これって不法侵入とかになるんじゃ、、、」
「なる。人の家に勝手に忍び込む、これは誰がどう見ても立派な犯罪行為。柚ちゃんもこの家以外に勝手に入ったら駄目だよ?」
当の本人はもはや隠す気もないようで、悪びれる様子もなくしれっと答える。
この状況を即座に把握し、卒倒しそうになった。
(最悪のタイムスリップだ、、、)
「はぁ〜、、、仕事で疲れた体がほぐされていくよう、、、」
(絶対に咲真さんの仕事を増やしてるよ、、、)
勇はお茶をすすったあと、羊羹を頬張った。
「け、警察の家に、、、」
「大丈夫!俺も警察だから!!」
何処が大丈夫なんだろう。
「何をしている」
威圧的な低い声が聞こえた。
それは、今にも斬りかかって来そうな怒りの雰囲気を出しているこの家主の咲真から発せられた声だった。
「、、、おい娘」
「は、はい!」
「何があったか説明しろ」
あまりにもイライラしているのが分かるので、嘘をつかず正直に説明した。少しでも嘘をつくようなものなら手に持っているサーベルで斬られてしまいそうだ。
それだけは本当にご勘弁。
「やっぱり、、、そういうことか」
ため息をつき、スっとサーベルを構える咲真。そして助走をつけて勇に斬りかかる。
剣の腕は確かなようで、隙も与えず攻撃をする。
だが、勇も当たらないように必死に避ける。上に下に右に左に、武器を持っていないので避けるしか選択肢がない勇は完全に押されていた。
「ちょま、一旦落ち着こう!?あーー!!警察!柚ちゃん、警察を大至急っ!!サーベル抜いた不審者がいるって言ってきて!!」
「貴様も警察だろう!」
家主に見付かって十分後。
「、、、全く、何度も家に入り込んで、、、お前それでも警察か」
「ごもっともです、、、」
怒りの形相をした咲真が勇に説教をしているのを柚は羊羹を頬張りながら見る。
「すまないな、こいつが迷惑をかけて。お詫びに俺の家で夕飯でもどうだ」
「俺のは?」
「お前には馬鈴薯の芽を用意するから安心しろ」
「それ洒落にならないやつ!ごめんって!!」
仲が良いんだなと改めて感じた夕暮れ時だった。
「はい、到着!」
柚が連れて来られた場所は一見普通の日本家屋だった。
カフェと言うから現代みたいなカフェを想像していた柚はその佇まいに少し違和感を覚える。由緒正しき茶屋みたいな雰囲気を出していた。
「此処は日本庭園を眺めるカフェなんだ、良い眺めだろ」
綺麗に切り揃えられた植木に敷き詰められた丸砂利、二匹の魚が泳いでいる小さめの池もある。
ごく普通に生け垣を跨いでカフェの中に入る勇に驚きながらも、真似して跨ぐ。
ただでさえ着物に慣れていないのに、腰まである生け垣を跨ぐのは難しかった。
少し躊躇したが結局、庭に入ることになってしまった。
(本当にこの入り方で良かったのかな、、、?)
縁側で座っていると、勇がまるで自分の家のようにカフェの中に上がっていく。
どうやら勇は常連客のようだった。
そして勝手知ったる様子で戸棚から茶葉と急須やらのお茶のセットを運んで、行き道で買ってきた羊羹を箱から出す。
「はいどーぞ」
少し苦そうなお茶とつやつやの羊羹。一緒に食べたら美味しいだろう。
「この羊羹は本当に絶品で、数量限定だからすぐなくなるんだが買えて良かった」
「へ、へぇ」
ここまで来ると流されやすい柚も疑い始める。
(セルフサービスと言えば聞こえは良いけど、流石にお客さんがお湯を沸かすとこから始めないと思う、、、明治時代でも、多分)
「あの、、、ここって何て名前のカフェですか?」
人の家に不法侵入していないでほしいと心から願う。
だが、そんな願いは虚しいに等しかった。
「カフェ・サクマだ」
終わった。
柚の頭の中で人生終了の鐘が鳴っている。
仮にも警察官だよね!?という言葉は寸のところで飲み込んだ。
「あの、、、これって不法侵入とかになるんじゃ、、、」
「なる。人の家に勝手に忍び込む、これは誰がどう見ても立派な犯罪行為。柚ちゃんもこの家以外に勝手に入ったら駄目だよ?」
当の本人はもはや隠す気もないようで、悪びれる様子もなくしれっと答える。
この状況を即座に把握し、卒倒しそうになった。
(最悪のタイムスリップだ、、、)
「はぁ〜、、、仕事で疲れた体がほぐされていくよう、、、」
(絶対に咲真さんの仕事を増やしてるよ、、、)
勇はお茶をすすったあと、羊羹を頬張った。
「け、警察の家に、、、」
「大丈夫!俺も警察だから!!」
何処が大丈夫なんだろう。
「何をしている」
威圧的な低い声が聞こえた。
それは、今にも斬りかかって来そうな怒りの雰囲気を出しているこの家主の咲真から発せられた声だった。
「、、、おい娘」
「は、はい!」
「何があったか説明しろ」
あまりにもイライラしているのが分かるので、嘘をつかず正直に説明した。少しでも嘘をつくようなものなら手に持っているサーベルで斬られてしまいそうだ。
それだけは本当にご勘弁。
「やっぱり、、、そういうことか」
ため息をつき、スっとサーベルを構える咲真。そして助走をつけて勇に斬りかかる。
剣の腕は確かなようで、隙も与えず攻撃をする。
だが、勇も当たらないように必死に避ける。上に下に右に左に、武器を持っていないので避けるしか選択肢がない勇は完全に押されていた。
「ちょま、一旦落ち着こう!?あーー!!警察!柚ちゃん、警察を大至急っ!!サーベル抜いた不審者がいるって言ってきて!!」
「貴様も警察だろう!」
家主に見付かって十分後。
「、、、全く、何度も家に入り込んで、、、お前それでも警察か」
「ごもっともです、、、」
怒りの形相をした咲真が勇に説教をしているのを柚は羊羹を頬張りながら見る。
「すまないな、こいつが迷惑をかけて。お詫びに俺の家で夕飯でもどうだ」
「俺のは?」
「お前には馬鈴薯の芽を用意するから安心しろ」
「それ洒落にならないやつ!ごめんって!!」
仲が良いんだなと改めて感じた夕暮れ時だった。