「あの、黒いのって一体、、、」
「死ニカエリだ」
「しに、、、かえり?」
聞き慣れない単語に首を捻る。
「死ニカエリというのは、この世に未練を残して死んでいってしまった魂の総称。彼らは生者の体を求め、呑む。つまり取り憑くんだが、呑まれた人は、、、」そこで勇は言葉を区切り、目を閉じて肩をすくめた。
つまりは、そういうことなんだろう。
「で、その死ニカエリは普通の人には視えないんだけど、柚ちゃんには視えていた。そして、、、どうやら柚ちゃんは引き寄せ体質みたいだね」
「え?」
息つく間もなく発せられた意味ありげな言葉に、柚は辺りをを見回す。
(うそ!こんなに!?)
気付けば柚の周囲を取り囲むように、無数の死ニカエリがいた。だが、自分達を倒す存在である咲真と勇がすぐ傍にいるせいか柚に直接触れてこようとはせず、遠巻きに此方の様子をうかがっている。
「仕方ない、業務遂行するか」
静かにため息をついた咲真が動き出した瞬間、その場にいた死ニカエリ達が蹴散らされ始める。ある者は刀で斬られ、ある者は危険を感じて逃げ出していった。
「す、凄い!」
柚は驚きの声を上げる。
「討伐課の本領発揮って訳、凄いだろ!」自分のことのように自慢する勇を見上げる。
曰く、討伐課というのは人に害なす死ニカエリを言葉通りに討伐するという、、、何か凄い人達らしい。
所属している人は十人弱のエリート、、、なのかな?
「それより、柚ちゃんのことどうする?身寄りがないんじゃ、、、」
「孤児か、、、」
「きっとこの服装、奉公先でまともな衣服も用意されなかったに違いない!そして追い出して、、、」
よく分からない妄想を繰り広げる勇に冷めた視線を送る咲真は「じゃあ拘置所にでも連れて行くか?屋根と床はあるぞ」という提案をするが、勇は首を横に振る。
「夜は人攫いだっているし、野犬に襲われでもしたらどうする」
「俺の家に居候させる」
「は?」
「え?」
予想外の提案に二人はゆっくりと勇の方を見る。
「俺達は柚ちゃんがひとり立ち出来る年齢になるまで衣食住などの面倒を見る、で、柚ちゃんは死ニカエリ捜査に協力してもらう」
勇は困惑する二人にお構い無しに良い提案だというように話を進めていく。
「それは分かったが、何故俺達なんだ。お前が持ち出した提案だろう。それに捜査に協力?民間人を巻き込むつもりか!?」
「まぁまぁ、落ち着けって。捜査協力は任意だし、何より上司の許可も必要だから」
「はぁ、、、好きにしろ」
諦めたようにため息をついた。
「柚ちゃんは?」
「え!?私!?」
「そ、柚ちゃんの意見も聞きたいな〜って」
まさか自分に振られるとは思わなくて、何も答えを用意していなかった。
「私は、、、衣食住が保証されればそれで、、、」
「よし、決まりだな!」
上機嫌な勇に連れられて俥(もとい人力車)で移動した場所は、郊外に佇むお屋敷だった。
「大きい、、、」
「立派だろ。さ、中に入ってくれ」
中に入ると、そこはもう立派だった。西洋技術を上手く活用した内装は、見るからに感銘の声が漏れてしまう。
「此処が柚ちゃんの自室。好きに使ってくれ」
案内された部屋は八畳程の畳が敷き詰められた部屋だった。木造りの文机と布団とタンスが申し訳程度に置いてある。
柱に掛けられたカレンダーに目をやると、一九〇四年(明治三十七年)の文字。
「、、、え?」
(明治、、、明治ってあの有名チョコレート会社が誕生した、あの明治、、、?)
その日、自分がタイムスリップしてしまったことに関して眠れるか不安だったが、無事に安眠した。
翌日、恐る恐る勇を探して勇の部屋を覗き込むと、ゴソゴソとタンスを漁っていた。
「勇さん?何して、、、?」
「あぁ、ちょっと探し物。、、、あったあった」
どうやら探し物が見付かったらしく、風呂敷に包まれた何かを柚に手渡す。
広げてみると着物と袴だった。
「これ、姉のなんだが、、、貰ってくれ」
多分、一旦断らないといけないと思うのに、有り難く貰い、自室で着替える。
(図々しいって、こういうことを指すんだろうな〜)
矢絣の着物に海老茶色の袴。
着替えると言っても着付けなんてしたことがないから適当になってしまったが仕方ない。
「死ニカエリだ」
「しに、、、かえり?」
聞き慣れない単語に首を捻る。
「死ニカエリというのは、この世に未練を残して死んでいってしまった魂の総称。彼らは生者の体を求め、呑む。つまり取り憑くんだが、呑まれた人は、、、」そこで勇は言葉を区切り、目を閉じて肩をすくめた。
つまりは、そういうことなんだろう。
「で、その死ニカエリは普通の人には視えないんだけど、柚ちゃんには視えていた。そして、、、どうやら柚ちゃんは引き寄せ体質みたいだね」
「え?」
息つく間もなく発せられた意味ありげな言葉に、柚は辺りをを見回す。
(うそ!こんなに!?)
気付けば柚の周囲を取り囲むように、無数の死ニカエリがいた。だが、自分達を倒す存在である咲真と勇がすぐ傍にいるせいか柚に直接触れてこようとはせず、遠巻きに此方の様子をうかがっている。
「仕方ない、業務遂行するか」
静かにため息をついた咲真が動き出した瞬間、その場にいた死ニカエリ達が蹴散らされ始める。ある者は刀で斬られ、ある者は危険を感じて逃げ出していった。
「す、凄い!」
柚は驚きの声を上げる。
「討伐課の本領発揮って訳、凄いだろ!」自分のことのように自慢する勇を見上げる。
曰く、討伐課というのは人に害なす死ニカエリを言葉通りに討伐するという、、、何か凄い人達らしい。
所属している人は十人弱のエリート、、、なのかな?
「それより、柚ちゃんのことどうする?身寄りがないんじゃ、、、」
「孤児か、、、」
「きっとこの服装、奉公先でまともな衣服も用意されなかったに違いない!そして追い出して、、、」
よく分からない妄想を繰り広げる勇に冷めた視線を送る咲真は「じゃあ拘置所にでも連れて行くか?屋根と床はあるぞ」という提案をするが、勇は首を横に振る。
「夜は人攫いだっているし、野犬に襲われでもしたらどうする」
「俺の家に居候させる」
「は?」
「え?」
予想外の提案に二人はゆっくりと勇の方を見る。
「俺達は柚ちゃんがひとり立ち出来る年齢になるまで衣食住などの面倒を見る、で、柚ちゃんは死ニカエリ捜査に協力してもらう」
勇は困惑する二人にお構い無しに良い提案だというように話を進めていく。
「それは分かったが、何故俺達なんだ。お前が持ち出した提案だろう。それに捜査に協力?民間人を巻き込むつもりか!?」
「まぁまぁ、落ち着けって。捜査協力は任意だし、何より上司の許可も必要だから」
「はぁ、、、好きにしろ」
諦めたようにため息をついた。
「柚ちゃんは?」
「え!?私!?」
「そ、柚ちゃんの意見も聞きたいな〜って」
まさか自分に振られるとは思わなくて、何も答えを用意していなかった。
「私は、、、衣食住が保証されればそれで、、、」
「よし、決まりだな!」
上機嫌な勇に連れられて俥(もとい人力車)で移動した場所は、郊外に佇むお屋敷だった。
「大きい、、、」
「立派だろ。さ、中に入ってくれ」
中に入ると、そこはもう立派だった。西洋技術を上手く活用した内装は、見るからに感銘の声が漏れてしまう。
「此処が柚ちゃんの自室。好きに使ってくれ」
案内された部屋は八畳程の畳が敷き詰められた部屋だった。木造りの文机と布団とタンスが申し訳程度に置いてある。
柱に掛けられたカレンダーに目をやると、一九〇四年(明治三十七年)の文字。
「、、、え?」
(明治、、、明治ってあの有名チョコレート会社が誕生した、あの明治、、、?)
その日、自分がタイムスリップしてしまったことに関して眠れるか不安だったが、無事に安眠した。
翌日、恐る恐る勇を探して勇の部屋を覗き込むと、ゴソゴソとタンスを漁っていた。
「勇さん?何して、、、?」
「あぁ、ちょっと探し物。、、、あったあった」
どうやら探し物が見付かったらしく、風呂敷に包まれた何かを柚に手渡す。
広げてみると着物と袴だった。
「これ、姉のなんだが、、、貰ってくれ」
多分、一旦断らないといけないと思うのに、有り難く貰い、自室で着替える。
(図々しいって、こういうことを指すんだろうな〜)
矢絣の着物に海老茶色の袴。
着替えると言っても着付けなんてしたことがないから適当になってしまったが仕方ない。