昼下がりの日本橋は活気づいている。人や人力車の行き交いも激しく、大通りには商人達が商いに勤しんでいた。食料品から生活雑貨に至るとこまで売られている光景が珍しくて、柚はついキョロキョロしてしまう。
チリンチリンと風鈴の音も心地良い。
(明治の街、、、時代劇みたい)
浅草や神楽坂とはまた違う雰囲気の日本橋。そういえば、大阪は天下の台所と称されていたから、ここより沢山物が売ってあるのだろうか?
行き交う人の殆どが和装だ。たまにスーツに帽子といった人も見かけるが、女性に対しては殆ど和服といって良い。
柚は改めて自分が明治に来てしまったんだと理解した。
(たま、、、何処にいるのかな?)
ここに足を運んだ理由は主に二つ。
一つ目は、たまを探すこと。
たまは明治に来てしまった時、抱いていたのだが、いつの間にかいなくなっていた。帰るなら、たまも一緒が良い。
そして二つ目、帰る方法を探すこと。
寝て起きたらタイムスリップという前代未聞の経験をしたが、帰り方が分からない。この時代で出会った人達に手伝ってもらうのは、流石に申し訳ない。ただでさえ、勇と咲真には迷惑をかけっぱなしなのに、、、ということで柚は一人で歩いていた。
(魚屋のとこは、、、)
魚を売っている店を覗き込むが、たまはいない。
道行く人に聞いても、「知らないなぁ」と返されてしまう。
高層ビルで遮られていない空は広く、土埃が舞う。風が吹くたびに、着物で柚は口元を覆わなければいけなかった。現代とは違って、道路はコンクリートで舗装されていないからだ。
「あ、日本橋!」
橋にかかる立派そうな木製の橋を見付けた。きっと、この橋も現代では残っていないのだろう。そもそも、現代の日本橋は石造りだった気がする。
さらさらと流れる川を見ていたら、「覗き込むのは危ないですよ」と聞き覚えのある声がした。
声が聞こえた方を見ると、そこには仕事の途中であろう井上がいた。
「井上さん、、、!」
「捜し物ですか?」
「まぁ、そんなとこです」
会話が続かず、風が井上の淡い水色の髪を揺らす。
「柚さん、木村屋のあんぱんいりますか?」
「あんぱん?」
井上が抱えているのは紙袋だった。その袋からは微かに良い匂いがする。
近くにあった長椅子に腰掛け、あんぱんを頂く。
普段チョコレヱトを食べている姿しか知らないので、紙袋から出されたあんぱんに少し驚く。
「はい、どうそ。颯介くんから貰ったんですけど、僕一人じゃ消化出来なくて困っていたんですよ」
「ほーらんですか?」
あんぱんを頬張りながら話したせいか、変な言葉になってしまった。
「そんなに詰め込んでは喉に詰まりますよ」
「ですよね〜、、、」
木村屋のあんぱんは絶品らしく、少し前に颯介が好物は木村屋のあんぱんと言っていたのを思い出した。
チリンチリンと風鈴の音も心地良い。
(明治の街、、、時代劇みたい)
浅草や神楽坂とはまた違う雰囲気の日本橋。そういえば、大阪は天下の台所と称されていたから、ここより沢山物が売ってあるのだろうか?
行き交う人の殆どが和装だ。たまにスーツに帽子といった人も見かけるが、女性に対しては殆ど和服といって良い。
柚は改めて自分が明治に来てしまったんだと理解した。
(たま、、、何処にいるのかな?)
ここに足を運んだ理由は主に二つ。
一つ目は、たまを探すこと。
たまは明治に来てしまった時、抱いていたのだが、いつの間にかいなくなっていた。帰るなら、たまも一緒が良い。
そして二つ目、帰る方法を探すこと。
寝て起きたらタイムスリップという前代未聞の経験をしたが、帰り方が分からない。この時代で出会った人達に手伝ってもらうのは、流石に申し訳ない。ただでさえ、勇と咲真には迷惑をかけっぱなしなのに、、、ということで柚は一人で歩いていた。
(魚屋のとこは、、、)
魚を売っている店を覗き込むが、たまはいない。
道行く人に聞いても、「知らないなぁ」と返されてしまう。
高層ビルで遮られていない空は広く、土埃が舞う。風が吹くたびに、着物で柚は口元を覆わなければいけなかった。現代とは違って、道路はコンクリートで舗装されていないからだ。
「あ、日本橋!」
橋にかかる立派そうな木製の橋を見付けた。きっと、この橋も現代では残っていないのだろう。そもそも、現代の日本橋は石造りだった気がする。
さらさらと流れる川を見ていたら、「覗き込むのは危ないですよ」と聞き覚えのある声がした。
声が聞こえた方を見ると、そこには仕事の途中であろう井上がいた。
「井上さん、、、!」
「捜し物ですか?」
「まぁ、そんなとこです」
会話が続かず、風が井上の淡い水色の髪を揺らす。
「柚さん、木村屋のあんぱんいりますか?」
「あんぱん?」
井上が抱えているのは紙袋だった。その袋からは微かに良い匂いがする。
近くにあった長椅子に腰掛け、あんぱんを頂く。
普段チョコレヱトを食べている姿しか知らないので、紙袋から出されたあんぱんに少し驚く。
「はい、どうそ。颯介くんから貰ったんですけど、僕一人じゃ消化出来なくて困っていたんですよ」
「ほーらんですか?」
あんぱんを頬張りながら話したせいか、変な言葉になってしまった。
「そんなに詰め込んでは喉に詰まりますよ」
「ですよね〜、、、」
木村屋のあんぱんは絶品らしく、少し前に颯介が好物は木村屋のあんぱんと言っていたのを思い出した。