行方不明者のポスターですね……。
あそこは生徒の通学路になるので我が校の方でも悪質なイタズラとして警察と動いています。
でも、なんの証拠も得られなくて今はまだ何も分からずじまいです。
早く生徒たちに安心して登校してもらえるように努めているんですがね。
『呪いの本』ですか?
あぁ〜、あれのことですね。
正直、その話はあんまりしたくないのですが。
……分かりました。遥々ここまで来てくださったんだし、話しましょう。
ただし、僕自身も自分で何を言っているのか分からない。という心情で話しているということだけは念頭に置いて欲しいです。
何から話しましょうか。まず、『呪いの本』は実際に実在する……いや、正確には『した』本と言った方が正しいですね。
結果から言ってしまうとその噂話は実話なんですよ。
しかもここ二、三年程の前の。
結構最近でしょう?
その代の先生方はご年配の方が多く、僕のようにこの学校に残っている先生も少ないので、今この学校にいる先生の中で、この話を最初から最後まできちんと全部把握しているのは僕くらいなものでしょう。
僕は当時、その文芸部の顧問をしていたんですよ。
こう見えても国語科を担当していますので。
『呪いの本』を見つけたのは当時の部員達と冬休みに入る前の大掃除をした時です。
うちの部室には代々発行している部誌や他校さんから頂いた部誌、余った部費で買った本なんかを収納してるスチーム書庫があるんですよ。
結構奥行があるやつで、奥に本が二、三冊程入るものなんですけど。
そこをある綺麗好き……というか、やるなら徹底してやらないと気が済まないという性格の部員が長らく部誌を追加で収納していくだけの書庫をひっくり返して掃除しようと提案しまして。
僕は正直、内心で「まじか……」なんて思ってたんですけど、部員達は意外と乗り気で、もしかしたらすごい本が入っているかもなんていうお宝探しの感覚だったのでしょう。
部室の中央にある向かいあわせの長机に次々と本が積まれていき、全ての本を出し終え、棚を雑巾で拭いたあと、本を戻す作業をみんなで開始した時です。
書庫の本にはやっぱりみんなが期待していたようなお宝はなく、奥の方には色褪せた過去の先輩が作ったり、頂いたりしたのであろう部誌がたくさん並べてあるだけでした。
しかし、本棚に部誌を並べ直している時にとある生徒の手が止まりました。
一番奥にあった本を戻していると並べている部誌の中で、一際明るい白色の冊子を見つけたそうなんです。
さっきも言ったんですけど、昔の本はもうとっくに色褪せていますから、その中で明るい色をしているということはそれは比較的最近に作られた部誌だということです。
部誌といっても、それは表紙もない、ただの原稿用紙に手書きの文字が書いてあり、それを二つ折りにしてホッチキスでとめただけのようなものでしたが。
見つけた部員は好奇心でみんなを呼んで、まるでお宝を見つけたようにその本を見せつけ、全員の前でその本を開きました。
原稿用紙の上の字は汚くもなく、特別綺麗な訳でもない、筆圧の少し濃い男性が書いたような字でした。
小説の中身自体もなんの変哲もなく、可もなく不可もないようなホラー小説でした。
もっと磨けばもっといいものになりそうな感じの小説。
筋の良い初心者が書いたみたいな初々しさもありました。
ただ、問題は小説の最後に書かれた作者の名前ですよ。
その名前の子は四肢が無い男の子でした。
でも、何故か僕はそれが当然のようにその字は『その子の字だ』と認識しました。
何を言っているかわからないでょう?
四肢がないのに、どうやって手書きで文字を書くのかって話ですよ。
普通なら第三者が彼の脳内にある物語を代筆したと考えるのが妥当です。
でも、本当に自分でも分からないんですが、なぜか、私はあの筆跡は彼のものだと認識して、事実を思い返してなお、その認識は私の頭から離れませんでした。
三年生はもう引退してましたから当時の部員たちは彼の四、五歳下の代。
誰も彼について知らなかったから、僕の怯えようが異様に映ったのでしょう。
それがいつしか怪談となりました。
その冊子ですか?
申し訳ありませんが、あれは当時の部員達が怯える私に気を使って処分してしまったのですよ。
もう、どこにも残っていません。
……すみません、彼の名前ももう覚えていないです。
もう、何十年もこの学校で生徒たちを送り出していますから。
……でも、不思議ですね。あんなことがあったなら僕は一生彼の名前を頭から離れなくなってもおかしくないのに、忘れているなんて。
歳なんですかね?(笑)
でも、四肢がない彼はいつもとある生徒といつも一緒に行動していたのは覚えていますよ。
隻腕の綺麗な女の子だった覚えがありますね。
あそこは生徒の通学路になるので我が校の方でも悪質なイタズラとして警察と動いています。
でも、なんの証拠も得られなくて今はまだ何も分からずじまいです。
早く生徒たちに安心して登校してもらえるように努めているんですがね。
『呪いの本』ですか?
あぁ〜、あれのことですね。
正直、その話はあんまりしたくないのですが。
……分かりました。遥々ここまで来てくださったんだし、話しましょう。
ただし、僕自身も自分で何を言っているのか分からない。という心情で話しているということだけは念頭に置いて欲しいです。
何から話しましょうか。まず、『呪いの本』は実際に実在する……いや、正確には『した』本と言った方が正しいですね。
結果から言ってしまうとその噂話は実話なんですよ。
しかもここ二、三年程の前の。
結構最近でしょう?
その代の先生方はご年配の方が多く、僕のようにこの学校に残っている先生も少ないので、今この学校にいる先生の中で、この話を最初から最後まできちんと全部把握しているのは僕くらいなものでしょう。
僕は当時、その文芸部の顧問をしていたんですよ。
こう見えても国語科を担当していますので。
『呪いの本』を見つけたのは当時の部員達と冬休みに入る前の大掃除をした時です。
うちの部室には代々発行している部誌や他校さんから頂いた部誌、余った部費で買った本なんかを収納してるスチーム書庫があるんですよ。
結構奥行があるやつで、奥に本が二、三冊程入るものなんですけど。
そこをある綺麗好き……というか、やるなら徹底してやらないと気が済まないという性格の部員が長らく部誌を追加で収納していくだけの書庫をひっくり返して掃除しようと提案しまして。
僕は正直、内心で「まじか……」なんて思ってたんですけど、部員達は意外と乗り気で、もしかしたらすごい本が入っているかもなんていうお宝探しの感覚だったのでしょう。
部室の中央にある向かいあわせの長机に次々と本が積まれていき、全ての本を出し終え、棚を雑巾で拭いたあと、本を戻す作業をみんなで開始した時です。
書庫の本にはやっぱりみんなが期待していたようなお宝はなく、奥の方には色褪せた過去の先輩が作ったり、頂いたりしたのであろう部誌がたくさん並べてあるだけでした。
しかし、本棚に部誌を並べ直している時にとある生徒の手が止まりました。
一番奥にあった本を戻していると並べている部誌の中で、一際明るい白色の冊子を見つけたそうなんです。
さっきも言ったんですけど、昔の本はもうとっくに色褪せていますから、その中で明るい色をしているということはそれは比較的最近に作られた部誌だということです。
部誌といっても、それは表紙もない、ただの原稿用紙に手書きの文字が書いてあり、それを二つ折りにしてホッチキスでとめただけのようなものでしたが。
見つけた部員は好奇心でみんなを呼んで、まるでお宝を見つけたようにその本を見せつけ、全員の前でその本を開きました。
原稿用紙の上の字は汚くもなく、特別綺麗な訳でもない、筆圧の少し濃い男性が書いたような字でした。
小説の中身自体もなんの変哲もなく、可もなく不可もないようなホラー小説でした。
もっと磨けばもっといいものになりそうな感じの小説。
筋の良い初心者が書いたみたいな初々しさもありました。
ただ、問題は小説の最後に書かれた作者の名前ですよ。
その名前の子は四肢が無い男の子でした。
でも、何故か僕はそれが当然のようにその字は『その子の字だ』と認識しました。
何を言っているかわからないでょう?
四肢がないのに、どうやって手書きで文字を書くのかって話ですよ。
普通なら第三者が彼の脳内にある物語を代筆したと考えるのが妥当です。
でも、本当に自分でも分からないんですが、なぜか、私はあの筆跡は彼のものだと認識して、事実を思い返してなお、その認識は私の頭から離れませんでした。
三年生はもう引退してましたから当時の部員たちは彼の四、五歳下の代。
誰も彼について知らなかったから、僕の怯えようが異様に映ったのでしょう。
それがいつしか怪談となりました。
その冊子ですか?
申し訳ありませんが、あれは当時の部員達が怯える私に気を使って処分してしまったのですよ。
もう、どこにも残っていません。
……すみません、彼の名前ももう覚えていないです。
もう、何十年もこの学校で生徒たちを送り出していますから。
……でも、不思議ですね。あんなことがあったなら僕は一生彼の名前を頭から離れなくなってもおかしくないのに、忘れているなんて。
歳なんですかね?(笑)
でも、四肢がない彼はいつもとある生徒といつも一緒に行動していたのは覚えていますよ。
隻腕の綺麗な女の子だった覚えがありますね。



