ここでもう一度、情報を整理しようと思う。
①志崎詩音について
志崎詩音はオカルト趣味を持っている。このことについてはもう疑いようがない。
『それに彼女、オカルト趣味?みたいなのがあったみたいで、教室でも雑誌広げてて、他の人に敬遠されてた覚えがあります。』(証言Cより抜粋)
さらに志崎菜沙の証言によってそれは確たるものになった。
また、志崎菜沙が言っていた『友達』というのは志崎詩音には多くの友達がいなかったことや、ずっと一緒に居るなどの情報から、恐らく行方不明者のことだろうと推測できる。
では、ここで疑問が浮かぶのは彼女がなにかに思い悩み、塞ぎ込んでいたということ。
『……でも、それがいつしか疲弊したような表情に変わっていった』
『思い悩むような顔をすることが増えていたようでした』(両方とも 証言 志崎菜沙 より抜粋)
前のことを踏まえて考えるのであれば、それはきっと呪いについてだろう。
呪いが段階的に四肢を失わせていくものだとしたら、行方不明者と志崎詩音の身体は徐々に呪いに蝕まれていっているのだから、その理由も納得がいく。
さらに言えば、まだ志崎菜沙と志崎詩音が交流のあった頃は、志崎詩音は四肢に異常がないことが分かる。
『それと、お姉ちゃんにも四肢に欠損はありませんよ。私の記憶の限りは、ですけど』(証言志崎菜沙より抜粋)
志崎詩音が呪いのことで思い詰めていたのだとしたら、それは例の行方不明者――友達についてのことだ。
もしかしたら、志崎詩音は友達の呪いに何かしようとしていたのかもしれない。
また、以下は志崎菜沙から聞いた志崎家が引っ越す前の志崎詩音の友人に彼女について、聞き込みを行った時の会話の一部を文字に起こしたものである。
【会話①】
志崎詩音さんですか?……小中学校と一緒でしたが、確かに彼女は他の人たちから嫌厭されていましたね。
私たちの周りには彼女のオカルト趣味を肯定してあげられる人も居なかった上、彼女は頭もよく、あまり進んで人と会話する性格でもなかっんたので、気取っていると思われていました。
【会話B】
誰があんな化け物とつるむのよ。
あの女は、自分の興味のために、夜な夜な一人で廃墟に忍び込むような奴よ。誰も、彼女を理解できやしないわよ。
【会話C】
彼女は心霊が好きでしたが、自分には霊感がないから、この身で心霊現象を体験しないと信じれないというタイプの人でした。それが、危険な事だと分かっていたとしても、です。かなりの変わり者だったと思いますよ。
そして呪われた彼女について、彼女はもうこの世にはいないかもしれない。
志崎家を出る前に、荷物を用意していると、志崎菜沙が紹介したツーショット写真が目に入った。
しかしそれは、姉妹揃ってのツーショット写真のはずが、志崎菜沙一人が立っているだけの写真へと変わっていた。
もしかしたら。彼女はもう……。
②行方不明者(『佐倉景』)について
行方不明者(ここでは「彼」と統一させてもらう)についてもある程度の人物像ができてきた。
『彼はあまり人と活発に関わる性格ではなかったので』(証言Cより抜粋)
『いつも暗い顔をしていた彼の表情が少しずつ明るくなっているのに気がついた頃でした』(証言Eより抜粋)
『なんだか暗くて、静かな人に変わったんですよ』(証言Fより抜粋)
これらの証言により彼の性格についてある程度分かってくる。
時系列順で追うと、彼は小学生高学年の時に明るい性格から暗い性格に変わってしまったようだ。
もちろん、自己形成の途中である思春期特有の性格の変化であったとすることもできるが、これは呪いのせいだと認識することもできる。
むしろ、そっちの方がしっくりとくる。
彼は高校生のある時期から元の明るい性格へと戻っていく。
それは志崎詩音と彼が出会った頃と同時期だ。
志崎詩音は彼の呪いをどうにかしようと動いていたならば、呪いによって歪められた性格が希望によって元の形に戻っていったのにも合点がいく。
③呪いについて
今のところ分かっていることは以下の通りだ。
・四肢に段階的な欠損を引き起こす。
・四肢の欠損について、他人の認識に作用する
・被呪者の名前に作用し、他人に自分の名前を忘れさせる
・ある一定の条件下で他人に移る
一つ目は言うまでもないが、二つ目の、他人の認識に左右する、というのは、 両手がないのに車椅子を押していた記憶があったり、文字を手書きで書いていた記憶があることなど、記憶の矛盾についてのことだ。
三つ目の名前については、彼の名前を誰も覚えていないことについてである。
そして四つ目、呪いが他人に移ることについて。
『私は自分を守るために、彼を見捨ててしまった』(証言Dより抜粋)
『彼女の身体からもほんの少しですが彼と同じ靄が立ち上っていたんです』(証言Eより抜粋)
これらの証言により、呪いは他人に移る性質を持っているのだろうと考察した。
「ある条件下」としたのは、風邪のようにすぐに移してしまうようなものならば、呪いの存在を認知していながら学校なんて来ていないだろうと予想できる。
また、もし、すぐに移ってしまうようなものなら、僕が今までインタビューしてきた人達に四肢に欠損がある人がいないのはおかしいと判断した。
しかし、「ある条件」には、他人との物理的、または心理的距離が関係あると考えられる。
理由として、志崎詩音が妹仲の良かったと会わなくなったことや、彼が人との接触を避けて生きてきた点にある。
さらに言えば、黒い靄が移っていると言われた志崎詩音は「知っている」と答えたことから、彼と志崎詩音はある程度の呪いの情報を握っていたことも把握できた。
しかし、志崎詩音の行動理由が未だ謎のままである。
オカルト趣味はいいが、呪いを受け入れることに同意してまで、彼と一緒にいる理由は何なのだろうか。
その答えの鍵は、志崎菜沙さんから受け取った封筒の中に隠されていた。
①志崎詩音について
志崎詩音はオカルト趣味を持っている。このことについてはもう疑いようがない。
『それに彼女、オカルト趣味?みたいなのがあったみたいで、教室でも雑誌広げてて、他の人に敬遠されてた覚えがあります。』(証言Cより抜粋)
さらに志崎菜沙の証言によってそれは確たるものになった。
また、志崎菜沙が言っていた『友達』というのは志崎詩音には多くの友達がいなかったことや、ずっと一緒に居るなどの情報から、恐らく行方不明者のことだろうと推測できる。
では、ここで疑問が浮かぶのは彼女がなにかに思い悩み、塞ぎ込んでいたということ。
『……でも、それがいつしか疲弊したような表情に変わっていった』
『思い悩むような顔をすることが増えていたようでした』(両方とも 証言 志崎菜沙 より抜粋)
前のことを踏まえて考えるのであれば、それはきっと呪いについてだろう。
呪いが段階的に四肢を失わせていくものだとしたら、行方不明者と志崎詩音の身体は徐々に呪いに蝕まれていっているのだから、その理由も納得がいく。
さらに言えば、まだ志崎菜沙と志崎詩音が交流のあった頃は、志崎詩音は四肢に異常がないことが分かる。
『それと、お姉ちゃんにも四肢に欠損はありませんよ。私の記憶の限りは、ですけど』(証言志崎菜沙より抜粋)
志崎詩音が呪いのことで思い詰めていたのだとしたら、それは例の行方不明者――友達についてのことだ。
もしかしたら、志崎詩音は友達の呪いに何かしようとしていたのかもしれない。
また、以下は志崎菜沙から聞いた志崎家が引っ越す前の志崎詩音の友人に彼女について、聞き込みを行った時の会話の一部を文字に起こしたものである。
【会話①】
志崎詩音さんですか?……小中学校と一緒でしたが、確かに彼女は他の人たちから嫌厭されていましたね。
私たちの周りには彼女のオカルト趣味を肯定してあげられる人も居なかった上、彼女は頭もよく、あまり進んで人と会話する性格でもなかっんたので、気取っていると思われていました。
【会話B】
誰があんな化け物とつるむのよ。
あの女は、自分の興味のために、夜な夜な一人で廃墟に忍び込むような奴よ。誰も、彼女を理解できやしないわよ。
【会話C】
彼女は心霊が好きでしたが、自分には霊感がないから、この身で心霊現象を体験しないと信じれないというタイプの人でした。それが、危険な事だと分かっていたとしても、です。かなりの変わり者だったと思いますよ。
そして呪われた彼女について、彼女はもうこの世にはいないかもしれない。
志崎家を出る前に、荷物を用意していると、志崎菜沙が紹介したツーショット写真が目に入った。
しかしそれは、姉妹揃ってのツーショット写真のはずが、志崎菜沙一人が立っているだけの写真へと変わっていた。
もしかしたら。彼女はもう……。
②行方不明者(『佐倉景』)について
行方不明者(ここでは「彼」と統一させてもらう)についてもある程度の人物像ができてきた。
『彼はあまり人と活発に関わる性格ではなかったので』(証言Cより抜粋)
『いつも暗い顔をしていた彼の表情が少しずつ明るくなっているのに気がついた頃でした』(証言Eより抜粋)
『なんだか暗くて、静かな人に変わったんですよ』(証言Fより抜粋)
これらの証言により彼の性格についてある程度分かってくる。
時系列順で追うと、彼は小学生高学年の時に明るい性格から暗い性格に変わってしまったようだ。
もちろん、自己形成の途中である思春期特有の性格の変化であったとすることもできるが、これは呪いのせいだと認識することもできる。
むしろ、そっちの方がしっくりとくる。
彼は高校生のある時期から元の明るい性格へと戻っていく。
それは志崎詩音と彼が出会った頃と同時期だ。
志崎詩音は彼の呪いをどうにかしようと動いていたならば、呪いによって歪められた性格が希望によって元の形に戻っていったのにも合点がいく。
③呪いについて
今のところ分かっていることは以下の通りだ。
・四肢に段階的な欠損を引き起こす。
・四肢の欠損について、他人の認識に作用する
・被呪者の名前に作用し、他人に自分の名前を忘れさせる
・ある一定の条件下で他人に移る
一つ目は言うまでもないが、二つ目の、他人の認識に左右する、というのは、 両手がないのに車椅子を押していた記憶があったり、文字を手書きで書いていた記憶があることなど、記憶の矛盾についてのことだ。
三つ目の名前については、彼の名前を誰も覚えていないことについてである。
そして四つ目、呪いが他人に移ることについて。
『私は自分を守るために、彼を見捨ててしまった』(証言Dより抜粋)
『彼女の身体からもほんの少しですが彼と同じ靄が立ち上っていたんです』(証言Eより抜粋)
これらの証言により、呪いは他人に移る性質を持っているのだろうと考察した。
「ある条件下」としたのは、風邪のようにすぐに移してしまうようなものならば、呪いの存在を認知していながら学校なんて来ていないだろうと予想できる。
また、もし、すぐに移ってしまうようなものなら、僕が今までインタビューしてきた人達に四肢に欠損がある人がいないのはおかしいと判断した。
しかし、「ある条件」には、他人との物理的、または心理的距離が関係あると考えられる。
理由として、志崎詩音が妹仲の良かったと会わなくなったことや、彼が人との接触を避けて生きてきた点にある。
さらに言えば、黒い靄が移っていると言われた志崎詩音は「知っている」と答えたことから、彼と志崎詩音はある程度の呪いの情報を握っていたことも把握できた。
しかし、志崎詩音の行動理由が未だ謎のままである。
オカルト趣味はいいが、呪いを受け入れることに同意してまで、彼と一緒にいる理由は何なのだろうか。
その答えの鍵は、志崎菜沙さんから受け取った封筒の中に隠されていた。



