――それはお姉ちゃんの趣味に原因があったんです。
お姉ちゃんは行き過ぎたオカルト趣味で、母と父はそれをよく思っていませんでした。気味の悪い子だ、と。
二人とお姉ちゃんの仲は犬猿の仲で、趣味を曲げないお姉ちゃんとお姉ちゃんに理想の娘でいて欲しい二人という構図でした。
お姉ちゃんは外見だけでいえば、モデルさんと遜色のない程でしたから。
母はよく「黙ってさえいれば」「残念美人だ」なんて言っていました。
今は私たちとお姉ちゃんは別居しています。というか、お姉ちゃんは母と父に縁を切られてしまったので。
原因はお姉ちゃんの趣味ではなく、お姉ちゃんが大学に行かなくなってしまったことが原因です。
お姉ちゃんは地元の国立大学に入学して、その後、地元とは言ってもこの辺は田舎の辺境ですから、高校卒業と同時に、大学が近い都心部で一人暮らしをし始めました。まぁ、一人暮らしの件は両親を半ば無理やり説得していたようですが。
しかし結局、お姉ちゃんは大学に行かなくなってしまったみたいです。元々お姉ちゃんは大学に進学するつもりはなく、両親に無理やり入学させられたようなものだったのでモチベーションが無かったといえば無かったわけなのですが……。
……確定した事実以外を喋るのは苦手なのですが、お姉ちゃんが学校に行かなくなった理由は他にあると思っています。
あくまで違うと思っているだけですが。他に具体的な理由はありません。
……お姉ちゃんに限って、「環境の変化に慣れなかった」などは無いと思います。お姉ちゃん、引っ越す前の学校では、かなり他の人に嫌厭されていましたが、それを気にしている様子は見たことがないので。
オカルト趣味もそうですが、お姉ちゃんは昔からかなり頭が良かったんですよ。ギフテッドって言うんですかね?それの傾向があった。だから、他の人からは距離を取られていたようです。ですが、お姉ちゃんがそれらの人たちを気にしていた素振りを見たことが私は一度もありませんし、他の人から見てもそうだったと思います。まるで、私たちとはどこか、違うところをずっと見ているような、そんな存在でした。
お姉ちゃんは人の目を気にして、駄目になるような存在ではありません。
……ただ一つ心当たりがあるとするならば、お姉ちゃんが『友達』と呼んでいた同級生のことです。
その人の四肢に欠損があるかどうかは知りません。
会ったことはありませんから。ただ、お姉ちゃんの話によくでてきた人です。
それと、お姉ちゃんにも四肢に欠損はありませんよ。
私の記憶の限りは、ですけど。
話が逸れましたね。お姉ちゃんはここへ引っ越してきた、高校一年生の夏から、毎日のようにその人の元へ通っていたと思います。
彼のことを話すお姉ちゃんは、いつも眩しいほどの笑顔だった。
……でも、それがいつしか疲弊したような表情に変わっていった。
思い悩むような顔をすることが増えていたようでしたし、原因があるとするならば、こちらの方だと思っています。
お姉ちゃんと会わないのか、ですか?
……会えるなら会いたいですよ。
私は、お姉ちゃんことが大好きでしたから。
お姉ちゃんの影に隠れていたから、母や父は気にしていませんが、私も相当な変わり者です。
表情も固いし、意思表示も苦手だし。
でも、そんな私のことを大事にしてくれた、ずっと一緒にいてくれたお姉ちゃんのことが私は好きでした。
ですが、お姉ちゃんは私ではなく、彼を選んだ。
きっともう、私の元へ帰ってくることは無いと思います。
……それですか?ここに引っ越してきた時の、高校一年生のお姉ちゃんと小学六年生の私のツーショットですね。
もう、五年も前のものになります。
その写真が、私たち二人が写った最後の写真なんですよ。
だから、それをずっと大事に飾ってます。
そばにあるのは、髪ゴムですよ。
今は少し色褪せてますけど、前までは綺麗なラベンダー色の、鮮やかな紫色の髪ゴムだったんですよ。
それは二個入りのゴムで、一つはそれ、もう一つはお姉ちゃんが持っています。
私が無理やりお姉ちゃんに渡したんですよ。
お姉ちゃんが友人とばかりいるようになってしまった私の嫉妬心を込めた贈り物です。
……お姉ちゃんが私の元に帰ってくることはありませんでしたが。
それから探偵さん。
これをお姉ちゃんから預かっています。
……お姉ちゃんのこと。よろしくお願いしますね。
お姉ちゃんは行き過ぎたオカルト趣味で、母と父はそれをよく思っていませんでした。気味の悪い子だ、と。
二人とお姉ちゃんの仲は犬猿の仲で、趣味を曲げないお姉ちゃんとお姉ちゃんに理想の娘でいて欲しい二人という構図でした。
お姉ちゃんは外見だけでいえば、モデルさんと遜色のない程でしたから。
母はよく「黙ってさえいれば」「残念美人だ」なんて言っていました。
今は私たちとお姉ちゃんは別居しています。というか、お姉ちゃんは母と父に縁を切られてしまったので。
原因はお姉ちゃんの趣味ではなく、お姉ちゃんが大学に行かなくなってしまったことが原因です。
お姉ちゃんは地元の国立大学に入学して、その後、地元とは言ってもこの辺は田舎の辺境ですから、高校卒業と同時に、大学が近い都心部で一人暮らしをし始めました。まぁ、一人暮らしの件は両親を半ば無理やり説得していたようですが。
しかし結局、お姉ちゃんは大学に行かなくなってしまったみたいです。元々お姉ちゃんは大学に進学するつもりはなく、両親に無理やり入学させられたようなものだったのでモチベーションが無かったといえば無かったわけなのですが……。
……確定した事実以外を喋るのは苦手なのですが、お姉ちゃんが学校に行かなくなった理由は他にあると思っています。
あくまで違うと思っているだけですが。他に具体的な理由はありません。
……お姉ちゃんに限って、「環境の変化に慣れなかった」などは無いと思います。お姉ちゃん、引っ越す前の学校では、かなり他の人に嫌厭されていましたが、それを気にしている様子は見たことがないので。
オカルト趣味もそうですが、お姉ちゃんは昔からかなり頭が良かったんですよ。ギフテッドって言うんですかね?それの傾向があった。だから、他の人からは距離を取られていたようです。ですが、お姉ちゃんがそれらの人たちを気にしていた素振りを見たことが私は一度もありませんし、他の人から見てもそうだったと思います。まるで、私たちとはどこか、違うところをずっと見ているような、そんな存在でした。
お姉ちゃんは人の目を気にして、駄目になるような存在ではありません。
……ただ一つ心当たりがあるとするならば、お姉ちゃんが『友達』と呼んでいた同級生のことです。
その人の四肢に欠損があるかどうかは知りません。
会ったことはありませんから。ただ、お姉ちゃんの話によくでてきた人です。
それと、お姉ちゃんにも四肢に欠損はありませんよ。
私の記憶の限りは、ですけど。
話が逸れましたね。お姉ちゃんはここへ引っ越してきた、高校一年生の夏から、毎日のようにその人の元へ通っていたと思います。
彼のことを話すお姉ちゃんは、いつも眩しいほどの笑顔だった。
……でも、それがいつしか疲弊したような表情に変わっていった。
思い悩むような顔をすることが増えていたようでしたし、原因があるとするならば、こちらの方だと思っています。
お姉ちゃんと会わないのか、ですか?
……会えるなら会いたいですよ。
私は、お姉ちゃんことが大好きでしたから。
お姉ちゃんの影に隠れていたから、母や父は気にしていませんが、私も相当な変わり者です。
表情も固いし、意思表示も苦手だし。
でも、そんな私のことを大事にしてくれた、ずっと一緒にいてくれたお姉ちゃんのことが私は好きでした。
ですが、お姉ちゃんは私ではなく、彼を選んだ。
きっともう、私の元へ帰ってくることは無いと思います。
……それですか?ここに引っ越してきた時の、高校一年生のお姉ちゃんと小学六年生の私のツーショットですね。
もう、五年も前のものになります。
その写真が、私たち二人が写った最後の写真なんですよ。
だから、それをずっと大事に飾ってます。
そばにあるのは、髪ゴムですよ。
今は少し色褪せてますけど、前までは綺麗なラベンダー色の、鮮やかな紫色の髪ゴムだったんですよ。
それは二個入りのゴムで、一つはそれ、もう一つはお姉ちゃんが持っています。
私が無理やりお姉ちゃんに渡したんですよ。
お姉ちゃんが友人とばかりいるようになってしまった私の嫉妬心を込めた贈り物です。
……お姉ちゃんが私の元に帰ってくることはありませんでしたが。
それから探偵さん。
これをお姉ちゃんから預かっています。
……お姉ちゃんのこと。よろしくお願いしますね。



