「姉について、ですね。……本当に来るとは。どうぞ、中へ」
案内されるままに家の中へお邪魔させていただく。
志崎詩音が同級生に渡していた封筒の中身は、志崎詩音の実家の住所が書かれた紙だった。
「姉はもうずっと帰ってきていませんが」
家へ行くと志崎詩音は居らず、代わりに志崎詩音の妹、高校生の志崎菜沙(なずな)さんが僕を出迎えてくれた。
白のニット服に黒のプリーツスカパン。綺麗な黒髪ロングヘアで可愛らしい女の子だが、その固い表情に思わずこちらも萎縮してしまう。
「……すみません。表情が固いのは昔からなので、あまり気にしないでくれると助かります」
「そうでしたか」
態度に出てしまっていただろうか……。気をつけよう。
「それで姉について聞きたいんですよね?できれば、母と父が帰ってくる前に話を済ませたいのでなるべく手早にお願いします」
「そうでしたか……それは失礼しました」
僕はなにか失礼なことをしただろうか。
態度が冷たい気が……。
「……すみません。母と父は姉のことをよく思っていないので、二人に姉の話を聞かすのは避けたいと言う意味です」
「なるほど……」
「それと、私の口調がこんななのも、元からですから。別に怒っているわけではありません」
「はぁ、なるほど」
「……私もあなたほど、思っていることが顔に出るような性格なら良かったんですけどね」
「え?!……それは大変失礼しました」
「いえ、その方がこちらもやりやすいので」
掴みどころのない人だ。
こちらの全てを見透かされている気がする。
「それでは……。さっきご両親から詩音さんは嫌われていると言っていましたがそれは何か理由が?」
「それは――」