下戸なくせして酒豪に憧れている貴女は、深夜にコンビニで大量のお酒を買ってきた。貴女の無謀な計画に付き合ってあげる私。しかし案の定、貴女はチューハイ二缶で酔い潰れた。呼吸が荒くなり、滑らかな肌が斑に赤くなっている。今にも死にそうな貴女が愛おしくて、思わずその上気した頬に口づけする。
「二十歳を迎えるまでには死にたいよね」というのが貴女の口癖だった。「老いてまで生きていたくないしさ」とも言っていた。けれど、貴女はなかなか死ななくて、来月には二十五になる。私はたまらず、「ねえ、いつ死ぬの?」と尋ねた。「もし、三十になっても生き延びちゃったらさ、あたしを殺してよ」
ある時から私は透明人間になり、誰の目にも映らなくなってしまったのだけれど、特別困ることはなかった。それどころか、以前の生活と全く変わらない。おはよう、と貴女が私のいる方向に挨拶する。私の後ろには貴女の友人がいる。他者への期待を捨てたのはいつからだろう。透明な私は悲しみを知らない。
貴女のために、高級なスイーツビッフェを予約した。当日にサプライズでそのことを伝えたら、喜んでくれてとても嬉しい。早速プレートいっぱいにデザートを盛る貴女。でも、結局殆ど食べきれなかったみたいだ。「残りはあんたが食べてよ」とか生意気を言う貴女に腹が立たない訳はないけど。今回だけね。
隕石が落ちて、もうすぐ人類は滅亡するらしい。そんな折、「なんでも一つだけお願い聞いてあげる」と貴女は魅力的な提案をくれた。人生最後のお願いだ。それなのに、こんな時に限って何も思いつかない。タイムリミットが迫ってるのに! 今にも泣きそうな私を、ニヤニヤしながら見ている貴女が恨めしい。