高校卒業後、さっそく校門前で耳たぶにピアッサーを刺す貴女。あんたにも開けてあげる、とか言われて、されるがままに開けてもらったピアスは斜めに入って最悪だった。ファーストピアスは怖くて未だに外せない。だって触れると痛む。だから、あれから十年が経つ今も、私のピアスホールは歪んだままだ。
本を貸したまま、貴女は遠くに引っ越してしまった。もう何年も会っていない。今更あの時の本を返してよ、なんて言えないし。何より面倒な人間に思われたくないし。部屋の片付けをしていると、本棚に空いた一冊分のスペースが目につく。私はあえてそれを埋めない。貴女の本棚には私の本があるだろうか。
デスゲーム会場。生き残りは私と貴女ただ二人。「あたし、これまでたくさんの人を殺してきたね」と貴女が呟く。ひどく感傷的に。「耐えきれないのよ、罪の重さに」と貴女が続ける。私はテーブルに置かれたピストルを手にした。そうして躊躇いもなく、貴女に銃口を突きつける。どうか貴女に死の救済を。
貴女の要望で、最寄りのスーパーでケーキの材料を揃えた。けれど、約束の時間になっても貴女は来ない。どうやら恋人から連絡があったので、そっちを優先するらしい。待ちきれなくて、私は部屋で一人、パックの苺を全て食べきる。貴女は知らないだろうけれど、苺のないショートケーキは相当に寂しいよ。
貴女との出会いは思いがけないものだった。一人寂しく学食を食べる私に、貴女は脈絡もない言葉を浴びせてきたのだ。「あんたを死んだ姉の代わりにしてもいいかな?」「うん、いいよ」とあっさり承諾する私。半年後、私は貴女にこんな提案をする。「彼氏に振られたので、私と付き合ってくれませんか?」
貴女はいつも肌身離さず、お気に入りのカッターを持ち歩いている。今日もまた、その細い腕に線状の傷が増えていくのが辛い。「ねえ、やめなよ」と私は怒る。けれど、貴女は絶対にやめてくれない。「どうせあたしの気持ちは分からないよ」と貴女が言うから、私は自分の腕にも同じ傷をつけてみる。痛い。
余命僅かな貴女は、病室で泣き叫んでいる。余命宣告を受けてから一年が経っても、貴女が立ち直ることは絶対にない。死への恐怖は着実に貴女を襲う。もちろん、私だって貴女が死ぬことは悲しい。適切に言うなら、貴女のいない世界に取り残されることが悲しい。だから先月、自殺マニュアル本を購入した。