本を貸したまま、貴女は遠くに引っ越してしまった。もう何年も会っていない。今更あの時の本を返してよ、なんて言えないし。何より面倒な人間に思われたくないし。部屋の片付けをしていると、本棚に空いた一冊分のスペースが目につく。私はあえてそれを埋めない。貴女の本棚には私の本があるだろうか。