幼い頃から病弱で、入退院を繰り返していた

小、中学はろくに通えず
高校にも進学できなかった


病状の悪化で
15歳から長い入院生活が始まる

ほとんど寝たきりの生活

筋力も体力も落ち
細い体、常に青白い顔
まるで、亡霊のようだった


自分の体なのに、自由にできないもどかしさ

食べることも、眠ることも、動くことも
うまくできない

そんな現状に嫌気がさして
苛立ちが募っていた


毎日毎日、行き場のない苛立ちを抱えて
病室のベッドの上で
ただ、時間が過ぎ去るのを待っていた


そんな折

見かねた家族が、少しでも
俺が過ごしやすいようにと

どこもかしこも人で溢れ
騒がしくて、忙しない
そんな都会にある、その病院ではなく

自然豊かで、空気の澄んだ田舎町の病院へ
転院することを決めた


田舎ではあるものの
医療体制はしっかりしているため
変わらない治療を受けながら
療養できるとのことで

家族は迷わず、職を捨て、家を捨て
新しいその場所で
一からすべてを築き直すことを選んだ


都会の喧騒
あの息苦しさから、解放されたおかげか
俺の体調は大分良くなったけれど

いたたまれなかった


家族に、今まで築き上げてきたものを
慣れ親しんだ土地や、人
積み重ねてきたさまざまなものを
捨てさせてしまった


奪ってしまった



そんなことはないと
俺(家族)が一番、大事なんだと

新しい暮らしも悪くない、新鮮で楽しいと

あの人たちは、屈託なく笑って言ったけど


その笑顔に、優しさに
俺は罪悪感でいっぱいになって
叫び出しそうになった