川島の宣言を受けて、不意に大勢の足音が、ザッザッと地面を踏みしめ、広場を包囲した。
フルフェイスのヘルメットを被って顔を覆い、全身黒ずくめの性別も人種も判別できない人影が十人ほど鉄パイプを握って開始の合図を待っている。
「な、何なのこいつら……」
面食らった千夏が人影を眺め回す。
「彼らは『執行人』です。
罪人に罰を与える地獄の番人といったところね。
その正体は貴方たちと同じ、楽園からこの地獄へ堕ちてきた罪人たちよ。
つまり貴方たちの成れの果て。
彼らは執行人として、転生することも死ぬこともない、地獄に永久に縛りつけられた哀れな存在ね」
美保の顔がみるみる青ざめていく。
「帰れ、ないの?わたしたち永遠に」
「そうよ、残念だったわね」
「おい、もういいだろ。そろそろ始めろよ」
待ち切れないとばかりに川島が割り込む。
「そうね。そろそろ始めましょうか」
執行人たちが一斉に四人へと詰め寄り、あっという間に取り囲んでしまう。
「なにを……」
言い終わらぬうちに、執行人の鉄パイプが無慈悲に振り下ろされ、傑の肩口を直撃する。
「ぐ、あっ!?」
とんでもない衝撃だった。
鉄パイプ一本による殴打とは思えないほどの、まるで数十キロもある鈍器で強か打たれたような重い重い一撃だった。
思わず肩を押さえて蹲る。
骨が折れていることは明らかだった。
しかし、傑が経験した骨折とは天と地の差があり、ドクン、ドクンと鼓動に合わせ、突き破るような激痛が傑を襲った。
同時に残る三人に鉄パイプが振り下ろされる。
三者三様の叫び声が迸る。
一秒とかからず、全員地面に這いつくばり、殴打を受けた場所を押さえて呻き始める。
目が飛び出しそうなほどの痛みに美保の意識が飛びかける。
殴られた肋骨がみしみしと軋み、音を立てて折れた。
呼吸ができない。肺も潰れているのかもしれない。
美保は懸命に喘ぎ、酸素を取り込もうとする。
武器が次々と振り下ろされ、美保の左足を直撃した。
朦朧としながら、同じように倒れ伏した千夏が、背を丸めて理不尽な暴力に耐えている姿が目に入った。
傑も洋介も、抵抗することもままならず、ただ骨を折られ、内臓を潰され、内出血に皮膚を青くし、顔を腫らしていた。
「意識はね、失えないの。だって気絶してる人間に暴行しても意味ないもの。ね、これでここが地獄だっていうことに納得した?」
遠くの方から志恩の愉しそうな声が届いた。
痛みを押して、美保は頷いた。
理解した、だからもう止めてくれという、意思の表れだった。
しかし、その懇願は、川島の狂気じみた笑いを助長するだけだった。
「はははっ誰が止めるかよ、こんな愉しい遊びを!」
川島の甲高い声と身体を壊さんばかりの殴打の音、呻く四人の声が世界の音の全てだった。
容赦なく振り下ろされる鉄パイプの下で、喘ぎ声を上げることもままならないクラスメイト四人を眺めながら、高橋ミヤビは、数時間前の川島とのやりとりを思い出していた。
フルフェイスのヘルメットを被って顔を覆い、全身黒ずくめの性別も人種も判別できない人影が十人ほど鉄パイプを握って開始の合図を待っている。
「な、何なのこいつら……」
面食らった千夏が人影を眺め回す。
「彼らは『執行人』です。
罪人に罰を与える地獄の番人といったところね。
その正体は貴方たちと同じ、楽園からこの地獄へ堕ちてきた罪人たちよ。
つまり貴方たちの成れの果て。
彼らは執行人として、転生することも死ぬこともない、地獄に永久に縛りつけられた哀れな存在ね」
美保の顔がみるみる青ざめていく。
「帰れ、ないの?わたしたち永遠に」
「そうよ、残念だったわね」
「おい、もういいだろ。そろそろ始めろよ」
待ち切れないとばかりに川島が割り込む。
「そうね。そろそろ始めましょうか」
執行人たちが一斉に四人へと詰め寄り、あっという間に取り囲んでしまう。
「なにを……」
言い終わらぬうちに、執行人の鉄パイプが無慈悲に振り下ろされ、傑の肩口を直撃する。
「ぐ、あっ!?」
とんでもない衝撃だった。
鉄パイプ一本による殴打とは思えないほどの、まるで数十キロもある鈍器で強か打たれたような重い重い一撃だった。
思わず肩を押さえて蹲る。
骨が折れていることは明らかだった。
しかし、傑が経験した骨折とは天と地の差があり、ドクン、ドクンと鼓動に合わせ、突き破るような激痛が傑を襲った。
同時に残る三人に鉄パイプが振り下ろされる。
三者三様の叫び声が迸る。
一秒とかからず、全員地面に這いつくばり、殴打を受けた場所を押さえて呻き始める。
目が飛び出しそうなほどの痛みに美保の意識が飛びかける。
殴られた肋骨がみしみしと軋み、音を立てて折れた。
呼吸ができない。肺も潰れているのかもしれない。
美保は懸命に喘ぎ、酸素を取り込もうとする。
武器が次々と振り下ろされ、美保の左足を直撃した。
朦朧としながら、同じように倒れ伏した千夏が、背を丸めて理不尽な暴力に耐えている姿が目に入った。
傑も洋介も、抵抗することもままならず、ただ骨を折られ、内臓を潰され、内出血に皮膚を青くし、顔を腫らしていた。
「意識はね、失えないの。だって気絶してる人間に暴行しても意味ないもの。ね、これでここが地獄だっていうことに納得した?」
遠くの方から志恩の愉しそうな声が届いた。
痛みを押して、美保は頷いた。
理解した、だからもう止めてくれという、意思の表れだった。
しかし、その懇願は、川島の狂気じみた笑いを助長するだけだった。
「はははっ誰が止めるかよ、こんな愉しい遊びを!」
川島の甲高い声と身体を壊さんばかりの殴打の音、呻く四人の声が世界の音の全てだった。
容赦なく振り下ろされる鉄パイプの下で、喘ぎ声を上げることもままならないクラスメイト四人を眺めながら、高橋ミヤビは、数時間前の川島とのやりとりを思い出していた。