第1章：目覚めの風
朝日が静かに広大な樹海を照らし始めた。龍也は薄暗い部屋の中でゆっくりと目を開けた。枕元には風見鶏が飾られ、その羽根が微かに揺れている。昨夜の喧嘩の余韻がまだ心に残り、彼の頭は重かった。パジャマの袖を握りしめ、深呼吸をした。

「今日は、逃げる日だ。」

龍也は自分にそう言い聞かせた。家族との喧嘩がエスカレートし、彼はもう耐えられなくなっていた。窓の外には美しいタイル張りの庭が広がり、その中心には華やかな花が咲き誇っていた。しかし、その美しさとは裏腹に、彼の心は嵐のようだった。

朝食の時間、龍也は急いでハンバーガーを食べながら家を出る準備をした。母親との言い争いが彼をさらに焦らせていた。はさみを手に取ると、無意識に指先で遊びながら、背後の家の扉を開けた。風見鶏が風を受けて回り、彼の決意を象徴しているかのようだった。

樹海へと向かう道はひらがな・カタカナ・漢字で描かれた看板が点在しており、まるで古い物語のページを歩いているようだった。龍也は足早に歩き出し、心の中で新たな生活への期待と不安が交錯していた。

道中、突然背後から声が聞こえた。「龍也、待って！」

振り返ると、幼馴染の華が走ってきていた。彼女の瞳は決意に満ちており、手には魔弾の射手として知られる古代の弓が握られていた。華は魔族との戦いに巻き込まれ、龍也に助けを求めていたのだ。

「一緒に逃げよう。僕たちならきっと乗り越えられる。」

華の言葉に、龍也の心は揺れ動いた。逃亡の旅は危険に満ちていたが、彼女への想いが彼を突き動かした。二人は手を取り合い、広大な樹海の中へと足を踏み入れた。

樹海の奥深く、魔族の影が忍び寄っていた。華の弓が閃き、魔弾が放たれる。その瞬間、龍也は自分の中に眠る力に目覚めた。彼は魔族に立ち向かう決意を固め、華と共に新たな運命への一歩を踏み出した。