「じゃあこの子はモンスター?」
「そうだな。だけど安全だから心配はしなくていいぞ」
「安全……そうだね」
お腹がいっぱいになったヒカリは甘えるようにトモナリの膝に乗った。
膝の上で丸くなってトモナリに撫でられている姿を見れば危ないモンスターにはとても思えない。
むしろ撫でてみたいなとすらミズキは思った。
「その子撫でてもいい?」
「ダメだぞ」
「ダメだってさ」
撫でていいのはトモナリだけ。
他の人に撫でられるつもりはヒカリにはさらさらなかった。
「トモナリ君は同じ学校……」
どうして昼間からここにと聞きかけてミズキは口をつぐんだ。
何か事情があることは確実だし、先日学校で問題が起きたことを思い出したからだった。
「少し前にイジメで問題になったろ。それで学校行ってないんだよ」
ミズキが配慮して聞かなかったのにトモナリはさらりと答えてしまった。
「ご、ごめん……」
「何を謝ることがあるんだ?」
別にイジメのことはなんとも思っていないしトモナリの方から勝手に言ったのだ。
ミズキが謝ることではない。
「いや……」
「俺のこと置いていったことかな?」
「そ、それは!」
「置いていったとはなんのことじゃ?」
「な、なんでもない!」
それにしてもまさか廃校で会った女の子がテッサイの孫娘であるというのはトモナリも驚いた。
けれど驚きだけでなくミズキについてなぜかどこかで聞いたことがある気がしてならない。
「な、なに?」
「いや……俺たち学校で話したことあるか?」
「んー? うーんと……多分ないかな?」
トモナリもミズキのことは記憶にない。
クラスも違うし交流したような感じもないのはミズキも同じだった。
「清水瑞姫……あっ!」
「トモナリどうした?」
「なんでもない」
思い出したと思わず声を上げてしまった。
トモナリはミズキを見たことがある。
ただしそれは同じ学校だからではない。
回帰前の何時ごろかまでは覚えていないけれど非常に剣の腕前に優れた剣姫と呼ばれる女性がいた。
泣きボクロが特徴的な美人で名前を清水瑞姫といった。
今目の前にいるミズキの将来の姿だった。
離れたところから戦っている様子を見たことが何回かある。
そう思ってミズキの顔を見てみるとその時の面影があるとトモナリは一人納得していた。
確かにこうした道場で剣を習っていたのなら強くても理解できる。
「それでうちに通ってるんだ」
知らない人がいると驚いたものだが事情を聞けばミズキも納得した。
トモナリには助けてもらった恩もある。
ヒカリも危なくなさそうだしテッサイが認めているのならミズキが騒ぐことはないと思った。
「なかなか筋がいいのだぞ」
「へぇ……」
「どうだ、一本手合わせをしてみんか?」
同い年であるしちょうどいいとテッサイは思った。
トモナリもどこかで人と戦う経験も必要なのでミズキが相手ならばと提案した。
「私はやってもいいよ」
「それじゃあ腹ごなしにでも」
未来の剣姫と一線交えることができるのは光栄である。
いつもテッサイとやる時は木刀なのだが今回は怪我の恐れもあるので竹刀でトモナリとミズキは手合わせすることになった。
「トモナリがんばれー!」
「あらぁ、どっちが勝つかしら?」
ヒカリとユキナが観客として見守る中で防具を身につけたトモナリとミズキは向かい合う。
「始め!」
審判のテッサイが試合開始の号令を発するけれど二人は互いに見つめあって円を描くように動くのみ。
ミズキの目つきが変わった。
一瞬の隙も見逃さないとトモナリのことを見る目は射抜くような鋭さを感じさせる。
「……まあ来ないなら」
先に動き出したのはトモナリだった。
グッと床を蹴ってミズキと距離を詰める。
「うっ!」
想像していたよりも重たくて鋭い一撃をミズキは防御する。
しかしバランスを崩してしまって反撃にできることができない。
その隙をついてトモナリは追撃を加える。
ミズキは激しい攻撃をなんとかさばいているけれど反撃の隙を見つけられずに押されていく。
このままでは押し切られてしまう。
「……今だ!」
トモナリに一瞬の隙を見つけたミズキが脇腹を狙った。
「あらあら……」
しかしそれはトモナリがわざと見せた隙だった。
焦ったミズキはトモナリの作戦に飛びついてしまった。
相手の行動が分かっていれば防御は難しくない。
むしろミズキの方は隙をついたと思ったのにいとも簡単に防がれて驚いた。
「一本! そこまで!」
頭に竹刀を落とされてようやくトモナリの罠にかかったのだとミズキは理解した。
「ふぅ……」
トモナリは面を外して髪をかく。
やはり面をつけるとどうしても熱がこもる。
ミズキも別に弱くはないのだろうけど回帰前の経験まであるトモナリの方が上だった。
こう考えるとあっさりとトモナリに勝ってしまったテッサイの方が異常だったのだなと改めて感じる。
「さすがトモナリ! 強いぞ!」
手合わせが終わって飛んでくるヒカリをトモナリは受け止める。
勝利を喜んでくれる相手がいるのもまた嬉しいものである。
一方でミズキは面も外さずぼんやりと立ち尽くしている。
「そうだな。だけど安全だから心配はしなくていいぞ」
「安全……そうだね」
お腹がいっぱいになったヒカリは甘えるようにトモナリの膝に乗った。
膝の上で丸くなってトモナリに撫でられている姿を見れば危ないモンスターにはとても思えない。
むしろ撫でてみたいなとすらミズキは思った。
「その子撫でてもいい?」
「ダメだぞ」
「ダメだってさ」
撫でていいのはトモナリだけ。
他の人に撫でられるつもりはヒカリにはさらさらなかった。
「トモナリ君は同じ学校……」
どうして昼間からここにと聞きかけてミズキは口をつぐんだ。
何か事情があることは確実だし、先日学校で問題が起きたことを思い出したからだった。
「少し前にイジメで問題になったろ。それで学校行ってないんだよ」
ミズキが配慮して聞かなかったのにトモナリはさらりと答えてしまった。
「ご、ごめん……」
「何を謝ることがあるんだ?」
別にイジメのことはなんとも思っていないしトモナリの方から勝手に言ったのだ。
ミズキが謝ることではない。
「いや……」
「俺のこと置いていったことかな?」
「そ、それは!」
「置いていったとはなんのことじゃ?」
「な、なんでもない!」
それにしてもまさか廃校で会った女の子がテッサイの孫娘であるというのはトモナリも驚いた。
けれど驚きだけでなくミズキについてなぜかどこかで聞いたことがある気がしてならない。
「な、なに?」
「いや……俺たち学校で話したことあるか?」
「んー? うーんと……多分ないかな?」
トモナリもミズキのことは記憶にない。
クラスも違うし交流したような感じもないのはミズキも同じだった。
「清水瑞姫……あっ!」
「トモナリどうした?」
「なんでもない」
思い出したと思わず声を上げてしまった。
トモナリはミズキを見たことがある。
ただしそれは同じ学校だからではない。
回帰前の何時ごろかまでは覚えていないけれど非常に剣の腕前に優れた剣姫と呼ばれる女性がいた。
泣きボクロが特徴的な美人で名前を清水瑞姫といった。
今目の前にいるミズキの将来の姿だった。
離れたところから戦っている様子を見たことが何回かある。
そう思ってミズキの顔を見てみるとその時の面影があるとトモナリは一人納得していた。
確かにこうした道場で剣を習っていたのなら強くても理解できる。
「それでうちに通ってるんだ」
知らない人がいると驚いたものだが事情を聞けばミズキも納得した。
トモナリには助けてもらった恩もある。
ヒカリも危なくなさそうだしテッサイが認めているのならミズキが騒ぐことはないと思った。
「なかなか筋がいいのだぞ」
「へぇ……」
「どうだ、一本手合わせをしてみんか?」
同い年であるしちょうどいいとテッサイは思った。
トモナリもどこかで人と戦う経験も必要なのでミズキが相手ならばと提案した。
「私はやってもいいよ」
「それじゃあ腹ごなしにでも」
未来の剣姫と一線交えることができるのは光栄である。
いつもテッサイとやる時は木刀なのだが今回は怪我の恐れもあるので竹刀でトモナリとミズキは手合わせすることになった。
「トモナリがんばれー!」
「あらぁ、どっちが勝つかしら?」
ヒカリとユキナが観客として見守る中で防具を身につけたトモナリとミズキは向かい合う。
「始め!」
審判のテッサイが試合開始の号令を発するけれど二人は互いに見つめあって円を描くように動くのみ。
ミズキの目つきが変わった。
一瞬の隙も見逃さないとトモナリのことを見る目は射抜くような鋭さを感じさせる。
「……まあ来ないなら」
先に動き出したのはトモナリだった。
グッと床を蹴ってミズキと距離を詰める。
「うっ!」
想像していたよりも重たくて鋭い一撃をミズキは防御する。
しかしバランスを崩してしまって反撃にできることができない。
その隙をついてトモナリは追撃を加える。
ミズキは激しい攻撃をなんとかさばいているけれど反撃の隙を見つけられずに押されていく。
このままでは押し切られてしまう。
「……今だ!」
トモナリに一瞬の隙を見つけたミズキが脇腹を狙った。
「あらあら……」
しかしそれはトモナリがわざと見せた隙だった。
焦ったミズキはトモナリの作戦に飛びついてしまった。
相手の行動が分かっていれば防御は難しくない。
むしろミズキの方は隙をついたと思ったのにいとも簡単に防がれて驚いた。
「一本! そこまで!」
頭に竹刀を落とされてようやくトモナリの罠にかかったのだとミズキは理解した。
「ふぅ……」
トモナリは面を外して髪をかく。
やはり面をつけるとどうしても熱がこもる。
ミズキも別に弱くはないのだろうけど回帰前の経験まであるトモナリの方が上だった。
こう考えるとあっさりとトモナリに勝ってしまったテッサイの方が異常だったのだなと改めて感じる。
「さすがトモナリ! 強いぞ!」
手合わせが終わって飛んでくるヒカリをトモナリは受け止める。
勝利を喜んでくれる相手がいるのもまた嬉しいものである。
一方でミズキは面も外さずぼんやりと立ち尽くしている。