ゆかりの前に差し出されたヒカリはキラキラとした目をしている。
 トモナリの母親ならヒカリにとって友達の母親ということになる。

 できるだけ印象を良くしてくれよというトモナリの願いが通じたようにヒカリは可愛い顔をする。

「うーん?」

 確かにとゆかりは思う。
 そもそも危険なモンスターなら今頃トモナリもゆかりも無事では済まない。

 よく見ると可愛い顔もしているし危ない感じはしない。

「ちゃんと世話するから!」

 ここで通報されてしまったらヒカリは連れて行かれてしまう。
 連れて行かれてしまうと何をされるか分かったものではない。

 生きたまま研究されればまだいいのかもしれない。
 単純に殺処分されたり殺された上で素材の研究にされる可能性もある。

 もしかしたらヒカリは人類の希望になるかもしれないのだ、通報されてはならない。

「でもモンスターでしょ? 今は危なくなくてもそのうち危なくなるかもしれないじゃない」

 ゆかりはヒカリがモンスターであるということに気がつきはした。
 しかしただの一般人であるゆかりはモンスターというものの知識がない。

 危険なものという認識はあるけれどどんなものなのか分かっていないのだ。
 トモナリはこれ以上疑問を持たれる前に押し切ってしまおうと考えた。

「それに……母さんがいない間、俺一人で寂しいし……」

「トモナリ……」

 ゆかりがうっとした表情を浮かべる。
 トモナリの体は何ともなく、カイトにいじめられていたことなどつゆほどにも普段に思っていないが、身体的精神的に休めるためにトモナリは少し休むことになっていた。

 ついでにトモナリはイジメを理由にしてくだらない授業なんて受けないように話を持っていくつもりだった。
 ゆかりとしてもトモナリが辛いのなら無理して学校に行くことはないと同じ思いを抱えていた。

 休むことになっているので少なくともしばらくは家にいることになる。
 そんな時に寂しいと言われるとゆかりとしても心苦しさがあった。

「ね?」

 働いているゆかりは日中トモナリのそばにいてあげられない。
 いじめがあった後だしトモナリが精神的に弱っていて寂しいと言われてしまうとゆかりは強く否定もできなくなってしまう。

「お願い!」

「う〜〜ん」

 トモナリはゆかりの目を見つめる。
 普段あまりわがままを言わないトモナリのお願いに唸るような声をあげてゆかりは悩む。

 そして一方でヒカリは感動していた。
 どうにも反応が良くないゆかりに食い下がっていることで自分のために友達がこんなにも頑張ってくれているとウルウルしている。

「ちゃんと面倒見るのね?」

「うん!」

「危ないと思ったらすぐに言うのよ?」

「分かった!」

「……ひとまず様子を見てみましょう」

 渋々ではあるがトモナリを一人にしておくこともゆかりは心配だった。
 ヒカリが何なのかという不安はあるもののトモナリを信頼してみようとゆかりは決めた。

「ありがとう、母さん!」

「やったー!」

 ゆかりの許可が出た。
 ヒカリも嬉しそうにトモナリに抱きついた。

「……やっぱり喋ってるじゃない!」