◆
…ん?
どこだ、ここ。
窓の外に広がる空は、朝と夜の間みたいな、曖昧な色をしている。
なんだか知っている香りの部屋には、乃糸ちゃんが好きなみるみるさんのキーホルダーが飾られていた。
乃糸ちゃんの家かな。
…また、僕を連れ戻したんだ。乃糸ちゃんは。
昨日は衝動的に電車に乗り、いつも自分を空っぽにしてくれる町へ行った。
行って、それでどうしたんだっけ。
全く記憶がない。
今も頭がぽわぽわとしていて、まともな考えができない。どうやら僕はぐっすり眠ってしまっていたようだ。
「…うわ、えぐ」
大量の通知がスマホに着ていた。全てメッセージアプリのものだった。
らーさんと、乃糸ちゃんと…。
小桜さん。
「しばらく、会いたくないな…」
ああいう優しい人に、僕みたいな人間が踏み込んでいくのは気が引けてしょうがない。
カフェでも暗い話しかできそうにないため、らーさんに連絡して休ませてもらおうと思った。
トークを開いた、その瞬間に目に飛び込んできたのは驚くものだった。
いくつも並ぶ、「小桜さん」の文字。
『今、お前を探しに小桜さんが行ったよ。迷惑かけんなよ』
『小桜さんは、深雪が思ってるよりも、お前のことで必死になってるよ』
思考が止まった。いや、急激に動き出した、かもしれない。
小桜さんは、昨日僕を探してた?なんで?
結局見つけられたのだろうか。もし今も探していたとしたらどうしよう。
僕のせいで、小桜さんにまで迷惑かけた?
「これくらい、知らないふりできないの…?」
小桜さんは優しいから、こんな僕のことは知ってほしくなかったのに。
僕は、乃糸ちゃんが用意してくれたであろう毛布をぎゅっと抱えた。
ただ、そこから溢れた優しい香りは、いつもカウンター越しに話す優しいあの人の姿を連想させた。
知らないふりをしていたら、次もなんてことなく会えたのに。
でも、こういうときに話したいのは、小桜さんなんだよなぁ。
「もうやだ…」
僕は、ほんの少しだけ涙をこぼす。
小桜さんみたいな人が、いや、でもやっぱり小桜さんが今隣にいたら、心が軽くなる気がする。
「あれ、深雪くん起きた?」
急に部屋の扉がガチャっと開き、見覚えのある人が顔を出した。
俺は突然のことに、状況が読めなかった。
「え、え…」
「まさか、泣いてたの?…今日はお休みだからね。色々話そう、深雪くん」
小桜さん、だよね?
本当に僕のことを探して、家に泊めてくれたのだろうか。
しかもちゃんと布団まで用意してくれて、僕は絶対に迷惑をかけているに違いない。
そんな何がどうなっているのかわからない僕に、はっきりわかったことがただ一つ。
小桜さんは、本当に優しい人で、あたたかい。
…ん?
どこだ、ここ。
窓の外に広がる空は、朝と夜の間みたいな、曖昧な色をしている。
なんだか知っている香りの部屋には、乃糸ちゃんが好きなみるみるさんのキーホルダーが飾られていた。
乃糸ちゃんの家かな。
…また、僕を連れ戻したんだ。乃糸ちゃんは。
昨日は衝動的に電車に乗り、いつも自分を空っぽにしてくれる町へ行った。
行って、それでどうしたんだっけ。
全く記憶がない。
今も頭がぽわぽわとしていて、まともな考えができない。どうやら僕はぐっすり眠ってしまっていたようだ。
「…うわ、えぐ」
大量の通知がスマホに着ていた。全てメッセージアプリのものだった。
らーさんと、乃糸ちゃんと…。
小桜さん。
「しばらく、会いたくないな…」
ああいう優しい人に、僕みたいな人間が踏み込んでいくのは気が引けてしょうがない。
カフェでも暗い話しかできそうにないため、らーさんに連絡して休ませてもらおうと思った。
トークを開いた、その瞬間に目に飛び込んできたのは驚くものだった。
いくつも並ぶ、「小桜さん」の文字。
『今、お前を探しに小桜さんが行ったよ。迷惑かけんなよ』
『小桜さんは、深雪が思ってるよりも、お前のことで必死になってるよ』
思考が止まった。いや、急激に動き出した、かもしれない。
小桜さんは、昨日僕を探してた?なんで?
結局見つけられたのだろうか。もし今も探していたとしたらどうしよう。
僕のせいで、小桜さんにまで迷惑かけた?
「これくらい、知らないふりできないの…?」
小桜さんは優しいから、こんな僕のことは知ってほしくなかったのに。
僕は、乃糸ちゃんが用意してくれたであろう毛布をぎゅっと抱えた。
ただ、そこから溢れた優しい香りは、いつもカウンター越しに話す優しいあの人の姿を連想させた。
知らないふりをしていたら、次もなんてことなく会えたのに。
でも、こういうときに話したいのは、小桜さんなんだよなぁ。
「もうやだ…」
僕は、ほんの少しだけ涙をこぼす。
小桜さんみたいな人が、いや、でもやっぱり小桜さんが今隣にいたら、心が軽くなる気がする。
「あれ、深雪くん起きた?」
急に部屋の扉がガチャっと開き、見覚えのある人が顔を出した。
俺は突然のことに、状況が読めなかった。
「え、え…」
「まさか、泣いてたの?…今日はお休みだからね。色々話そう、深雪くん」
小桜さん、だよね?
本当に僕のことを探して、家に泊めてくれたのだろうか。
しかもちゃんと布団まで用意してくれて、僕は絶対に迷惑をかけているに違いない。
そんな何がどうなっているのかわからない僕に、はっきりわかったことがただ一つ。
小桜さんは、本当に優しい人で、あたたかい。



