『ここは、絡むと良くないような人たちのたまり場です。本当に気をつけてください。大人とはいえ、危険だと思います』
乃糸ちゃんは、そう送ってきてくれた。
『うん。慎重にね』
『はい。五番目の駅で降りて、駅から出たらずっと東に進んでください』
さすが、説明がわかりやすい。
私は言われた通りの駅で降り、東にずっと進んだ。
あたりはもう暗く、ぽつぽつと佇む街灯の灯りしか頼りにならなかった。
だが、進んでいくと、私がDETOXを見つけた時のように、キラキラとしたネオン街が先にあるのがわかった。
しかし、手前にDETOXのようなお店はない。
…深雪くん、そっちは行かないほうがいいって言ってたのに。
私は意を決して、ネオン街へと進んだ。
キラキラでガヤガヤとした、私とは合わない場所。
早く路地裏に行かないと、怖い人たちに声を掛けられてしまう。
店と店の間に、狭いが路地裏に繋がる隙間を見つけた。
そこに入った瞬間、ネオン街が隣にあるとは思えないほど静かで、空気が冷たいことを感じた。
ここにいるの?こんなところにいて、寒くないの?
私は、深雪くんを探し回った。
途中で寝ている人やうずくまっている人が見えて、不安がどんどんと募っていった。
少しして、屋上から全体を見渡してみようと思い、暗く、もう機能していないような雰囲気のビルに上った。
カン、カン、と、自分の足音だけが響く。
屋上につくと、一人の人の姿が見えた。
今にも壊れそうな錆びたフェンスに腕を組んで乗せている、黒い後ろ姿。
深雪くんだとしたら、つけているのを見たことがないピアス。
でも、髪型や背丈は深雪くんだ。
「…み、深雪くん、なの?」
声を震わせて、私はその人に声を掛けた。
すると、その人はゆっくりとこちらを振り返った。
「…小桜さん、どうしたの?」
人工的な傷跡が、そこにはあった。
とても怖かった。
深雪くんじゃないみたいで、声は冷たくて、黒いパーカーを着ていた。
絶対に、そんな恰好じゃあ寒いのにも関わらず、なんてことないようにしている。
「こんなとこに来たら危ないって言ったのに」
いかにも作ったような笑顔で、私に言う。
「…じゃあなんで、深雪くんはここにいるの?帰ろうよ」
「急に来てどうしたの。…まさか、あいつに言われて来たの?」
あいつ、とは、まさか乃糸ちゃんのことなのだろうか。
「だめだよ、いつもの深雪くんじゃないよ。乃糸ちゃんを、あいつなんて言わないじゃん」
「みんな乃糸ちゃんのことを庇うんだね。僕は、なんにもない」
言っていることがちぐはぐだ。
深雪くん、深雪くんじゃないよ。こんなの、何があったの。
「…帰ろう!!あったかいごはん、一緒に食べよう!!」
「え?…ねぇ、離して」
私は、もう耐えられなくなった。
あったかいごはんを食べれば、きっと元に戻るよ。
大丈夫だよ、深雪くん。
…大丈夫だよね?
私は深雪くんを引っ張って、駅まで急いで、電車に乗った。
急に何があったの、とか、本当に大丈夫なの、とか、色々訊きたいことはあるけれど。
まずは、一緒に帰ろう。
深雪くんは驚いたようだったが、まだ目は虚ろなままだった。
乃糸ちゃんは、そう送ってきてくれた。
『うん。慎重にね』
『はい。五番目の駅で降りて、駅から出たらずっと東に進んでください』
さすが、説明がわかりやすい。
私は言われた通りの駅で降り、東にずっと進んだ。
あたりはもう暗く、ぽつぽつと佇む街灯の灯りしか頼りにならなかった。
だが、進んでいくと、私がDETOXを見つけた時のように、キラキラとしたネオン街が先にあるのがわかった。
しかし、手前にDETOXのようなお店はない。
…深雪くん、そっちは行かないほうがいいって言ってたのに。
私は意を決して、ネオン街へと進んだ。
キラキラでガヤガヤとした、私とは合わない場所。
早く路地裏に行かないと、怖い人たちに声を掛けられてしまう。
店と店の間に、狭いが路地裏に繋がる隙間を見つけた。
そこに入った瞬間、ネオン街が隣にあるとは思えないほど静かで、空気が冷たいことを感じた。
ここにいるの?こんなところにいて、寒くないの?
私は、深雪くんを探し回った。
途中で寝ている人やうずくまっている人が見えて、不安がどんどんと募っていった。
少しして、屋上から全体を見渡してみようと思い、暗く、もう機能していないような雰囲気のビルに上った。
カン、カン、と、自分の足音だけが響く。
屋上につくと、一人の人の姿が見えた。
今にも壊れそうな錆びたフェンスに腕を組んで乗せている、黒い後ろ姿。
深雪くんだとしたら、つけているのを見たことがないピアス。
でも、髪型や背丈は深雪くんだ。
「…み、深雪くん、なの?」
声を震わせて、私はその人に声を掛けた。
すると、その人はゆっくりとこちらを振り返った。
「…小桜さん、どうしたの?」
人工的な傷跡が、そこにはあった。
とても怖かった。
深雪くんじゃないみたいで、声は冷たくて、黒いパーカーを着ていた。
絶対に、そんな恰好じゃあ寒いのにも関わらず、なんてことないようにしている。
「こんなとこに来たら危ないって言ったのに」
いかにも作ったような笑顔で、私に言う。
「…じゃあなんで、深雪くんはここにいるの?帰ろうよ」
「急に来てどうしたの。…まさか、あいつに言われて来たの?」
あいつ、とは、まさか乃糸ちゃんのことなのだろうか。
「だめだよ、いつもの深雪くんじゃないよ。乃糸ちゃんを、あいつなんて言わないじゃん」
「みんな乃糸ちゃんのことを庇うんだね。僕は、なんにもない」
言っていることがちぐはぐだ。
深雪くん、深雪くんじゃないよ。こんなの、何があったの。
「…帰ろう!!あったかいごはん、一緒に食べよう!!」
「え?…ねぇ、離して」
私は、もう耐えられなくなった。
あったかいごはんを食べれば、きっと元に戻るよ。
大丈夫だよ、深雪くん。
…大丈夫だよね?
私は深雪くんを引っ張って、駅まで急いで、電車に乗った。
急に何があったの、とか、本当に大丈夫なの、とか、色々訊きたいことはあるけれど。
まずは、一緒に帰ろう。
深雪くんは驚いたようだったが、まだ目は虚ろなままだった。



