カフェ「DETOX」に通い始めて、一か月ほどが経ったある日のことだった。
私はいつものように来店したのだが、その日は金曜日で、常連さんが長く居座る日だったからか、深雪くんの様子がおかしかった。
「深雪くん、大丈夫…?」
私はさすがに心配になり、そっと声を掛けた。
いつものイケメンオーラが、今日は腐ったみかんみたいな、変なオーラに変わっていたのだ。
「大丈夫じゃないです」
深雪くんはテーブルに突っ伏して、大きなため息をついた。
「悪いんですが、今日はすぐ店を出てもらえませんか?」
「え?な、何があったの?具合悪いの…?」
どうやら体調が悪いわけではなく、深雪くんがこうなっている理由を説明するのは時間がかかるそうだ。
深雪くんがそう言うのなら何かしらよくないことがあるようなので、今日は一杯デトックスウォーターを飲んで帰ることにした。
「じゃあ、デトックスウォーターを一つお願いします」
と注文した、直後だった。
お店のドアが開き、華奢な女の子が入ってきた。
白く細い足、腰くらいまである束ねられた黒髪。高校生だろうか。
どうして、こんなお店に一人で来たのだろう。
「深雪ー?来たばい」
…ん?
深雪?
「あー…来ちゃった」
深雪くんはそう言って、私に小さな声で言った。
「今すぐ店出て。お願い」
「え、」
「お願い、早く」
華奢な女の子は、深雪くんに近づいてきた。
私は荷物を整理して、店を出ようとしていた。
「どげんしたと?そげん顔して」
「ううん、なんでもないよ」
「そげんわけなかろ!?こん人と何喋りよったと?」
私は今にも折れてしまいそうなほど細い手に腕をつかまれ、驚いてしまう。
「あんた、ただんお客しゃんやなかろ。…ちょっと、深雪に関わらないでくれます?」
今まで方言で喋ってたのに、急に標準語…。
「私、ただの客で…」
「じゃあ、耳元で深雪に何言われとったと?まさか」
「の、乃糸ちゃん!!」
女の子は深雪くんの大きな声に驚いて、ゆっくり私の腕から手を離した。
女の子の雪のように白い肌は、静かに煌めいている。
「み、深雪?」
「その人は、僕の信頼できる人なの!今から話すから座って!」
深雪くんは私の隣に女の子を座らせて、テキパキと動き始めた。
女の子はコートを脱いだ。やはりコートの下は制服で、きっちりとした着こなしだった。
私は何か話すべきなのかわからず、少し黙っていたが、口を開いた。
「えっと、深雪くんの友達とかでここへ来たの…?」
大きな瞳が私をじっと見つめてから、女の子は呆れたようにこう言った。
「どうして私が何も知らない人から諸事情を尋ねられて、答えないといけないんですか?」
「それは確かに、すみません…」
この子、なんでこんなにピリピリしてるの…?
何か深雪くんと親密な関係にあるのだろうか。
私はいつものように来店したのだが、その日は金曜日で、常連さんが長く居座る日だったからか、深雪くんの様子がおかしかった。
「深雪くん、大丈夫…?」
私はさすがに心配になり、そっと声を掛けた。
いつものイケメンオーラが、今日は腐ったみかんみたいな、変なオーラに変わっていたのだ。
「大丈夫じゃないです」
深雪くんはテーブルに突っ伏して、大きなため息をついた。
「悪いんですが、今日はすぐ店を出てもらえませんか?」
「え?な、何があったの?具合悪いの…?」
どうやら体調が悪いわけではなく、深雪くんがこうなっている理由を説明するのは時間がかかるそうだ。
深雪くんがそう言うのなら何かしらよくないことがあるようなので、今日は一杯デトックスウォーターを飲んで帰ることにした。
「じゃあ、デトックスウォーターを一つお願いします」
と注文した、直後だった。
お店のドアが開き、華奢な女の子が入ってきた。
白く細い足、腰くらいまである束ねられた黒髪。高校生だろうか。
どうして、こんなお店に一人で来たのだろう。
「深雪ー?来たばい」
…ん?
深雪?
「あー…来ちゃった」
深雪くんはそう言って、私に小さな声で言った。
「今すぐ店出て。お願い」
「え、」
「お願い、早く」
華奢な女の子は、深雪くんに近づいてきた。
私は荷物を整理して、店を出ようとしていた。
「どげんしたと?そげん顔して」
「ううん、なんでもないよ」
「そげんわけなかろ!?こん人と何喋りよったと?」
私は今にも折れてしまいそうなほど細い手に腕をつかまれ、驚いてしまう。
「あんた、ただんお客しゃんやなかろ。…ちょっと、深雪に関わらないでくれます?」
今まで方言で喋ってたのに、急に標準語…。
「私、ただの客で…」
「じゃあ、耳元で深雪に何言われとったと?まさか」
「の、乃糸ちゃん!!」
女の子は深雪くんの大きな声に驚いて、ゆっくり私の腕から手を離した。
女の子の雪のように白い肌は、静かに煌めいている。
「み、深雪?」
「その人は、僕の信頼できる人なの!今から話すから座って!」
深雪くんは私の隣に女の子を座らせて、テキパキと動き始めた。
女の子はコートを脱いだ。やはりコートの下は制服で、きっちりとした着こなしだった。
私は何か話すべきなのかわからず、少し黙っていたが、口を開いた。
「えっと、深雪くんの友達とかでここへ来たの…?」
大きな瞳が私をじっと見つめてから、女の子は呆れたようにこう言った。
「どうして私が何も知らない人から諸事情を尋ねられて、答えないといけないんですか?」
「それは確かに、すみません…」
この子、なんでこんなにピリピリしてるの…?
何か深雪くんと親密な関係にあるのだろうか。



