「みて、ベルベッチカ。僕らの家だよ」
「白にしてくれたんだ」

 少女の顔がぱあっと明るくなる。
 この村に来てふた月が経った。大好きな、愛しいアレクが誇らしげに新築の家を見せる。木で出来ているのは、ほかの家と同じ。でも、真っ白なペンキで塗ってある。せっかく新調したばかりの色鮮やかなダウンの胸元に、白いペンキが付いてしまっている。逃亡生活の中で奪ったSUVがいつもペンキの臭いがしていたのも、この為なんだろうとベルベッチカは思った。

「白、好きだろ? ぜーんぶ、塗ってみた!」
「ぷっ……あはははは……」
「え、ダメ? 変かなあ」
「ははははは、あはは……ううん、ちがうちがう。背の高いきみが、一生懸命しゃがんで、小さくなって下まで塗ってたのかと思うとね……あっははは」