お父さんは、ゆうを真っ直ぐ見た。

「ゆうに、言わなければならないことがある」
「あなた……」
「いいんだ。いずれ言わなくてはならなかったんだから、な」

 ……

 お父さんが母さんと出会ったのは、娘が家出をしたと、下町の高池のご両親が大祇小学校の職員室に駆け込んできたのがきっかけだった。……今の下町で和菓子屋をやってる、おじいちゃんとおばあちゃんだな。
 お父さんはこの学校に異動してきたばかりで、三十一歳。母さんはまだ、小学五年生だった。
 ふたつ前の大祇祭が終わって、三年しか経っていなかった。だからおおかみに襲われる可能性は少なかったんだが……ご両親は大慌てだった。

「心配しすぎなのよ、父さんも、母さんも」

 村が村だからな……ご両親の気持ちもよく分かった。それでお父さんは、大祇小学校の先生たちと手分けして、村の家々を一件づつ周ったんだ。ところが、どんなに周っても手がかりがない。しょうがないからとなりのY市の警察署に通報して、山狩りをした。それで見つかったのが……

「うちの本殿の中だったな。たしか」

 ええ。……どうやって入ったのか、本殿の中からひょっこり見つかった。

「ふふふ、そんなこともあったわね」

 まあ、それで母さんをご両親……下町のおじいちゃんとおばあちゃんの所に送り届けていると……

「告白、したのよね」

 突然だったからな……あれにはびっくりした。まあ、未成年だったし、交際は十八歳を超えてからだと伝えて、ご両親に届けたわけだ。で、七年経って母さんが高校を出たら、お付き合いさせてもらったわけだ。