そういうと、拳銃を持つゆうの手に、おじいちゃんが手を重ねた。

「私も孫娘も、ヒトだ。祭りでは、可哀想に何百人ものヒトが犠牲になった。……どうか、どうか、この村の呪いを断ち切っておくれ」
「この村に、残っているヒトは、だれ?」

 ゆうが拳銃からおじいちゃんに目を移す。

「ほとんどが祭りの日に犠牲になった。おおかみに変えられてしまった。今の時点でヒトと判明しているのは……私と沙羅。毅さんに静さん……君のご両親だね。あと……クラスメイトに橋立という子はいなかったかね。あの子とその両親も……」
「だめです、おじいちゃん。美玲は僕の前でおおかみに食いちぎられました。今日会いに行ったら何事も無かったかのようにいたけど……」
「ああ……だめだったか。その子は手遅れだ。おおかみになってしまった。おそらくご両親も……ダメだろう……」

 リビングに沈黙が流る。

「それで……」

 ゆうが沈黙を破った。

「なんで僕はトマトジュースしか飲めなくなったの?」
「そうか。それがあったな」

 おじいちゃんがゆうを見た。

「それについては私が」

 お父さんが声を上げた。

「ゆうに、言わなければならないことがある」

 お父さんは、ゆうを見てメガネをクイっとした。