「それは、誰ですか」

 すまん、ゆうくん。許してくれ。私にもわからんのだ。おそらく満月の「始祖」なのだろうが、巧妙にヒトに擬態していて、おおかみなのかヒトなのかすら、見分けがつかない。
 ああ、もうひとつ。新月の「始祖」は、細胞単位での再生が可能だ。どんなに切り刻んでも、焼いても、食べられても。体が揃えば、再生して生まれ変われる。

「ええっ! それって!」

 ああ、ゆうくん。君の愛するベルベッチカを、取り戻すことも可能だ。

「えーと……話が色々あってわかんなくなってきた」

 沙羅、わかった。まとめると、こうだ。
 ひとつ。この村には、ヒト、満月のモノ、新月のモノが混在している。祭りの時、肉を不味そうにしていたヒトがいたはずだ。それは、ヒトの証拠だ。
 ふたつ。満月のモノには「始祖」がいて、他のおおかみをコントロールしている。母体を滅することができれば、コピー達もみな滅ぶはずだ。
 みっつ。新月のモノは、生贄にされ、満月のモノたちに食われた。が、新月の「始祖」である為、復活も可能だ。
 そして、よっつ目。どちらにも、弱点がある。新月のモノは、十字架型の杭で胸を貫くと、刺している間は完全に動きを封じることが出来る。それと、水を恐れる。水に近づきたがらない。これらは新月の「始祖」でも同じだ。満月のモノは、銀の弾丸を打ち込むことで滅ぼすことが出来る。