「満月の力を減らすことの出来るもの」
「まさか」

 ゆうの顔から血の気が引いていく。

「……ゆうくん。そのまさかなんだよ。それは……『新月のモノ』の肉なのだ。祭りの日に出されただろう。あの肉は『新月のモノ』の肉だ」
「嘘だっ! そんな、そんな! だって、だってそれって……」

 ゆうは激しく動揺した。心臓が大太鼓みたいに激しく鳴って、耳鳴りがする。

「そうだ。あの肉は、新月のモノ、ベルベッチカ・リリヰのものだ」

 ……

 トイレの外で、沙羅がゆうの名を呼びながら必死にドアをたたく。

「おええっ。げえええっ」

 ゆうは便器を抱いて、吐き続けた。トマトジュースしか飲んでないから、真っ赤な血みたいな色をしている。いや……血を吐いているのかもしれない。
 だって、自分が食べたのは。この世で一番好きな、ベルベッチカ・リリヰの舌だったのだから。

『だいじょうぶかい』

 ベルの声が聞いてきた。