(まあ、いっか。沙羅も嬉しそうだし)
「おお、お刺身まで。豪華ですな」
「お待たせしました」

 寝巻きに着替えたお父さんが出てきた。

「席につこうか。ゆう、テレビを消しなさい」

 うるさいバラエティ番組が鳴るテレビを、ぷちっと消した。

「じゃあみなさん、いただきます」

 お母さんがそう言って、みんなで割り箸をぱきんと割った。

「はまちおいしー!」
「こうして誰かのおうちで食べるのは久しぶりだの」
「うん、なかなか。どこで頼んだ?」
「香坂さんとこ。あそこオードブルも、頼めばやってくれるの」

 こうさか亭。下町にある、洋食屋さんだ。結花の家でお父さんとお母さんがやっている。 お母さんは結花が二年生の時亡くなった。前に食べに行ったら、結花がメイド服でウエイトレスをやっていた。クラスでいちばんおしゃれで背の高い結花だ。
 ……沙羅とはまた違った方向で、すごい美人だった。

「おいしー! って、ゆうちゃん食べないの?」
「……僕、トマトジュースしか飲めないんだ」
「へ? どゆこと?」
「じゃあ」

 沙羅のおじいちゃんが口を開いた。

「どうして、そうなのか。この村の抱えている業を、話すとしようか」

 お父さんもこくり、とうなずいた。
 みんな、食事の手を止めた。

 ……