「っ! 頭が見えた、もう少しだ!」
「いたい、いたいよアレク!」
「ほら、息を、息をして!」
「はっはっはっ……うああああああ──っ」
「おぎゃあ、おぎゃあ」

 最後の力でいきんだ時、赤ちゃんはこの世に産まれ落ちた。

「産まれた! 産まれたよ! ほら、見て! 女の子だよ、君と同じ、金髪で青い目の……」

 だが、がっくりと石炭の山に倒れ込み、動けない。

「しっかり! しっかりして!」
「おぎゃあ、おぎゃあ」
「目を覚まして! お願いだから」

 ごとんごとん。ごとんごとん。さあっと、視界が開ける。白い空が見える。トンネルを抜けたようだ。
 がたんがたん、がたんがたん。

「ほら、ホンシューに着いたよ。二度とおおかみを恐れないで済む、トーキョーはもうすぐだよ」
「おぎゃあ、おぎゃあ」
「だから目を覚まして……ベルベッチカ……」

 ……

「うわあっ」

 ゆうは、はね起きた。

「ん……ゆうちゃん?」

 いつの間にかゆうも沙羅も家のソファで眠ってしまっていたらしい。ぎゃはははは、テレビでは芸人が観客相手にコントをしている。沙羅が覗き込む。

「ゆめ、見たの?」

 ずきん。下腹部が今も痛んでいるかのように感じた。