がたんごとん、がたんごとん。どこか、電車の上に居るようだ。

「うわあああ!」

 下腹部が引きさかれるくらいの痛みに、叫び声を抑えられない。
 冷たい粒が顔に当たる。雪が降るなか、屋根のない電車に乗っている。

「あああぁぁぁ! うぁぁああ!」

 声が出なくなるほど叫んでいるのに、骨盤を砕かれるような痛みは引いてくれない。

「しっかり! もうすぐセーカントンネルだ」
「アレク、アレク、いたい、すごくいたいんだよ……うあああっ!」

 ごとんごとん、ごとんごとん。視界が真っ暗になる。電車はトンネルに入ったのか、光の帯がきらきらと後ろに下がる。

「もうすぐだ、もうすぐホンシューだ。トーキョーまであと少しだ!」
「はっはっはっ、うああああっ!」

 呼吸が、呼吸がまともに出来ない。

「トーキョーまでいけば、満月の始祖に襲われずに生きていける!」

 未熟な産道を引き裂かれる痛みの余り、顔を左右に振った。石の山……いや、石炭の山が見える。ここが石炭を運ぶ貨車の中だということがわかった。