「お母さん、何だよこれ」

 夕方四時。ゆうは呆れたように漏らす。
 デリバリーのオードブルのプレート──エビフライにハンバーグにフライドチキン──、お刺身の盛り合わせ、たくさんのおにぎり……食べきれない、と言うと。

「あらっ、そっか、ゆうちゃん食べられないんだったわ! うっかりしてたー!」

 いや、そうじゃない、パーティする訳じゃないんだから……
 沙羅のおじいちゃんが深々と頭を下げた。

「わざわざ、ありがとうございます」
「いえいえ、そんな、頭をあげてください。来ていただけて嬉しいんですから」

 大人たちが話している間、沙羅がゆうの座るソファのとなりに乗ってきた。ぐいっと四つんばいのまま、顔を近づける。

「ゆうちゃん、覚えてないの」
「何を?」
「たくさんのおおかみたちが……ゆうちゃんを、その……」

『食べたんだよ』

 ベルの声が急に割り込んできた。

『きみは、おおかみ達に質量のおおよそ四十パーセントを食べられ、欠損したんだ』
「……食べられたの?」

 沙羅は、顔色を悪くしながらこくりとうなづいた。