まるでもう帰らないかのような言い方が気になったけれど。とりあえずはいと答えた。ゆうは、マグカップの中を飲み干した。ただのトマトジュースなのに、なんだかすごくお腹が満たされた気がする。

「昼間、ちょっと出かけたいんだけど」
「どこに行くんだ」

 お父さんが間髪入れずに聞いてくる。

「……ちょっと、確かめたいんだよ」

 またお父さんがメガネをくいっとした。やっぱり、こわい。

「だ、大丈夫、すぐそこに行くだけだから」
「あなた、ゆうは新月の始祖ですから」
「それでも、危険なんだ」

 ゆうはもう聞かずにはいられない。

「新月って、なに? 始祖って、なに?」

 お父さんもお母さんも、黙ってしまった。

「……それを、夜話す。今日は家にいろ」

 そうとだけ言うと、仕事だ、と言ってスーツに着替えに行った。

 ……

 ゆうはとりあえず自分の部屋に戻って、なつやすみの宿題のプリントをやった。
 今日の分を終わらせてから、リビングにもどった。丸付けをしてもらわないといけない。

「ええ、いいわよ、ちょっとまって」

 よっと……洗濯物を干していたお母さんが、敷布団のシーツを物干し竿にかけた。
 お母さんはリビングに戻って、席について赤えんぴつを握った。
 まる……まる。赤えんぴつで丸を付ける心地よい音がリビングにひびく。

「やっぱり、今日、どうしても行きたい」