あゆみ先生が、血まみれの洞窟の中で両手を広げてにっこりと笑う。

「はいはーい。みなさん、大祇祭は楽しかったかなー?」
「はーい!」

 翔も、航も、茜も……美玲も。みんな笑顔で返事する。……沙羅がいない。
 あっ、ベルだ、みんなの後ろにベルがいる。ゆうは必死に愛するその子の名を叫ぶ。

「ベルベッチカさんには、こっちに来てもらいましょう」

 けれどあゆみ先生は笑顔のままそう言って、ベルの背中に手を当てて、みんなといっしょに奥の本殿へ歩いていく。

「待って、先生! ベルを返して!」
「ゆう、ここにいろよ」

 叫ぶゆうを、翔が止める。

「ここにいなよ、ゆーくん」

 死んだはずの美玲が笑顔で言う。

「ここにいなよ」
「ここにいなよ」
「ここにいなよ」

 みんなの手がゆうにまとわりついてきた。

「やめろ、はなせ!」
「ここにいなよ」
「はなせ、ベルをっ!」
「ここにいなよ」
「ベルを返せ──っ!」

 ゆうの叫びは……洞窟中に響くほどの大きさだった。

 ……