「ぎゃああっ」
「バケモノだあっ」
「いたい、いたいっ」

 気がつくと、外では阿鼻叫喚の悲鳴がひびいている。地獄の釜の蓋が開き、おおかみたちが外にあふれ出したのだ。

「こっち!」

 ゆうの手を引っ張ったのは沙羅だった。となりでは中学生のお姉さんが、巫女装束のまま腸を引きずり出されている。ゆうは手を引かれるまま、祭壇の奥の扉へ向かった。

「ほんとの本殿の御神体があるお部屋! おじいちゃんが今いる、ぜったい安全な場所があるんだっ!」

 かかっ、かかっ、かかっ!
 後ろからおおかみが追いかける音が聞こえる。

「早く、はやくっ!」

 こども二人は、岩をくり抜いて作られたとても長くて狭い廊下をなんとか走るが、足音はすぐ後ろだ。突き当たりは回廊になっていた。

「こっちだよ!」

 沙羅の手がゆうを右に引っ張る。
 どがっ、ぎゃいんっ。
 今しがたゆうたちがいた場所に、おおかみが突っ込んで頭を打って悲鳴をあげた。そのまま回廊を反対側まで走ると、どこかへと続く上に登る階段と、反対側にはふすまが空いた六畳間があった。