五分ほどして全員の皿に肉は乗せられた。沙羅が、袴に差していた鈴を取り、しゃらんと鳴らす。

「もろもろのこら きこしめせ きこしめせ」

 しゃらんしゃらんしゃらんしゃらん。

「きこしめせ きこしめせ」

 しゃらーん。

 それまでたましいが抜けたように座っていた村の人たちは、最後の鈴の音を合図に目の前の肉にかじりついた。おはしも、手も使わずに、顔をつっこんで。一心不乱にむさぼりついているその様はまるで……おおかみだった。

「うえっ、ぺっ、ぺっ」

 となりの美玲が肉を口から出した。どうやら、おいしくないらしい。

「なにこれ、超まっず……って、ゆーくんっ?」

 ゆうは、目の前の肉を手に持って、耳に当てている。耳をこうして当てると、愛しい愛しい女の子の声が、聞こえるのだ。会いたかった、その子の声が。

『生きて。生きて』

「うん、わかった。生きるよ、ベル。僕は生きる」

 そう言って、ゆうはその肉をかんだ。甘い、何より甘かったあの、ベルベッチカ・リリヰの舌の味がした。